Metagame Clock.
2007年7月24日コメント (3)
ちょいとルールのお話とは違う方面の記事を。
個人的に面白いと感じた、メタ戦略の考え方を紹介する。
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構築戦において、M;tGのデッキは、
大きく分けて3通りの古典的なタイプに分かれる。
・主にクリーチャーで殴り倒す「ビートダウン」
・カードの組み合わせで一気に勝利をもぎとる「コンボ」
・アドバンテージを第一に考え、優位性を保つ「コントロール」
この3つは互いに3すくみの関係にあり、ちょうどジャンケンのようになっている。
曰く、ビートダウン(グー)はコンボ(パー)に負け、コントロール(チョキ)に勝つ。
コンボ(パー)はコントロール(チョキ)に負け、ビートダウン(グー)に勝つ。
といった具合である。
しかし最近はこのデッキ・タイプに当てはまらないデッキが数多く出てくるようになった。
たとえば、上記3タイプのうち2つの属性を持つタイプがそれである。
・ビートダウン + コンボ
・コンボ + コントロール
・コントロール + ビートダウン
これだけではデッキの特性が見えてこない。
そこで、ジャンケンの理論と同様に、「○○のデッキを食えるのは××」という
ことを考えてみよう。
1)ビートダウン < ボード・コントロール(中速)
まずビートダウンを考えよう。これを食えるデッキは、
場をコントロールする要素があるデッキである。
これらは「ボード・コントロール」と呼ばれる。
具体的には、集団除去の《神の怒り/Wrath of God》や、
高性能の単体除去《化膿/Putrefy》、もしくはビートダウンが苦手とする
いくらでも使いまわしのできる呪文を多用するデッキである。
クリーチャーを直接破壊することなく無力化する呪文なら
それでもこちらの部類に入る。《プロパガンダ/Propaganda》は良い例である。
2)ボード・コントロール(中速) < コンボ
ではボード・コントロールを食えるデッキはなんだろうか?
場に生物が無くても勝てて、
対生物のカードが紙になるようなデッキといえば「コンボ」である。
このように、相性を考えるときには
「相手となるデッキに対抗する手段が多い」
または、「相手に入っているカードが無駄になることが多い」
ということから考えなくてはいけない。
3)コンボ < コントロール(低速パーミッション)
ではコンボを食えるデッキとはなんだろうか?
コンボにはキーとなるカードが必ずあり、それを打ち消す・取り除くことによって
デッキを機能不全にしてしまうようなデッキを、コンボ・デッキは苦手としている。
つまり、カウンター(打ち消し・ライブラリー除去)呪文を中心に据えた「コントロール」に弱い。
最近のコントロールはパーミッションと呼ばれる打消し主体のものから、
ドロー呪文やマナ加速によって、アドバンテージを稼いで優位性を保ちつつ
大きいマナ・コストの呪文1〜2枚で勝利をつかむようなデッキが多く見られる。
(スタンダード環境では特に顕著である)
4)コントロール(低速パーミッション) < アグロ・コントロール(テンポ)
さて一見弱点が無いように見えるコントロールだが、
その特性として、どうしても低速になりがちである。
そこでアドバンテージを取られない始めのターンのうちに
ダメージ・クロックを展開し、除去呪文は軽量の打ち消しで耐えるという
デッキが開発された。それがアグロ・コントロールである。
早いターンでの決着を想定しているため、テンポなどと呼ばれたりもするが
これは「tempo-advantage」という言葉と誤解される恐れもある。
5)アグロ・コントロール(テンポ) < ビートダウン
そのアグロ・コントロールだが、クリーチャーと打ち消し呪文の2面性を
持っているため、どうしても生物の質が落ちてしまう。
そのため、本質的にビートダウンには相性がわるい。
軽量の打ち消し呪文も、ビートダウンに対してはあまり良い影響をもたらさない。
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これでデッキ・タイプがぐるっと一回りした。
これら5つのデッキタイプを、時計のように円の周りに配置したものが、
「メタ・クロック」(Metagame Clock)である。
(* 記事トップの図参照)
メタ・クロックは通常の時計と同じく、時計回りに見ることができる。
メタの変遷は、現在メジャーなデッキタイプから始まり、それから順次
それらを『食える』デッキへと変遷していく。
たとえば、現在優勢なのがビートダウンであれば、次の時間は
ボード・コントロールのデッキへと変遷していくのである。
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では、メタ・クロックを具体的に見てみよう。
9版環境下のスタンダード(第9版+コールドスナップ+RAVブロック+TSPブロック)
での主だったデッキを分類する。
・イゼットトロン(コントロール)
・青黒コントロール(コントロール)
・ナルコブリッジ(コンボ)
・プロジェクトX(ビートダウン(注1))
・コラーシュ黒単(アグロ・コントロール)
・グルールビート(ビートダウン)
・赤単スライ(ビートダウン)
・白緑赤ズー(ビートダウン)
・ソーラーフレア(ボード・コントロール)
・赤白青トリコロール(ボード・コントロール)
・ドラゴンストーム(コンボ)
・オルゾフコントロール(ボード・コントロール)
・メガハンデス(アグロ・コントロール)
(注1)プロジェクトXは基本はビートダウンだが、コンボ要素が含まれている。
便宜上、ビートダウンとする。
分類はややイイカゲンなのをお許し願いたい。
デッキの細部はプレイヤーの調整によって異なるので、
一概にそうともいえないものも含まれている。
これらをメタ・クロックに入れていこう。
00分にビートダウンの代表デッキ・・・ここではグルールビート・・・を入れて、
あとは順次当てはめていく。ならべるのは大雑把でかまわない。
同じデッキ分類に当てはまるときは、前後のデッキ特性を見て考える。
たとえば、赤単ビートダウンよりも、白緑赤ズーのほうが
より「ボード・コントロール」デッキに近い。
当てはめた結果はトップの図のようになる。
さて、これをどう読めばよいだろうか。
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メタ・クロックの読み方は、基本的には自分の出ようとする大会を
良く知っておかなくてはならない。そして、そこでの過去のメタを読み、
それをメタ・クロックに当てはめ、「15分だけクロックを進める」のである。
5分類したデッキはそれぞれジャンケンのようになっているが、
実際のデッキはそのように綺麗に分類できない。
そこで、15分だけずらすと、ちょうどそれらの苦手となるデッキ分類を
指すようになる。これでメタを読めばよい。
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メタ・クロックは各自で調整ができる。
やり方は全く同じで、Tier1またはTier2のデッキを挙げて、
それらを5分類し、メタ・クロックに貼り付ければよい。
メタ・クロックはたまに歪むことがある。
5分類の中で明らかに弱いものがあるだろうし、
カードプールの関係でそのデッキタイプが組めない・組みにくいという
レギュレーションも確実に存在する。
たとえば、スタンダードでは「軽い打消し呪文」が少ないために、
アグロ・コントロールは組みにくい。
そうなると、勢力が少ないタイプの「15分前」のデッキを見ると、
そのレギュレーションにおいての暫定最強デッキが見つかる。
これによるメタ変遷もあるだろうし、新しいデッキを模索するプレイヤーは
このようなメタの読み方もできるだろう。
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来週の記事予告。
メタ論議は具体性に欠けることが多く、机上の空論になりがちなので、
次回は、筆者自身が10版のスタンダードについてメタ・クロックを書き、
それに基づいたデッキ構築と、その結果までをレポートする予定です。
というわけで来週の日曜日はBMに出没しますので、名古屋のみなさんはお手柔らかに。
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そんなところで。
個人的に面白いと感じた、メタ戦略の考え方を紹介する。
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構築戦において、M;tGのデッキは、
大きく分けて3通りの古典的なタイプに分かれる。
・主にクリーチャーで殴り倒す「ビートダウン」
・カードの組み合わせで一気に勝利をもぎとる「コンボ」
・アドバンテージを第一に考え、優位性を保つ「コントロール」
この3つは互いに3すくみの関係にあり、ちょうどジャンケンのようになっている。
曰く、ビートダウン(グー)はコンボ(パー)に負け、コントロール(チョキ)に勝つ。
コンボ(パー)はコントロール(チョキ)に負け、ビートダウン(グー)に勝つ。
といった具合である。
しかし最近はこのデッキ・タイプに当てはまらないデッキが数多く出てくるようになった。
たとえば、上記3タイプのうち2つの属性を持つタイプがそれである。
・ビートダウン + コンボ
・コンボ + コントロール
・コントロール + ビートダウン
これだけではデッキの特性が見えてこない。
そこで、ジャンケンの理論と同様に、「○○のデッキを食えるのは××」という
ことを考えてみよう。
1)ビートダウン < ボード・コントロール(中速)
まずビートダウンを考えよう。これを食えるデッキは、
場をコントロールする要素があるデッキである。
これらは「ボード・コントロール」と呼ばれる。
具体的には、集団除去の《神の怒り/Wrath of God》や、
高性能の単体除去《化膿/Putrefy》、もしくはビートダウンが苦手とする
いくらでも使いまわしのできる呪文を多用するデッキである。
クリーチャーを直接破壊することなく無力化する呪文なら
それでもこちらの部類に入る。《プロパガンダ/Propaganda》は良い例である。
2)ボード・コントロール(中速) < コンボ
ではボード・コントロールを食えるデッキはなんだろうか?
場に生物が無くても勝てて、
対生物のカードが紙になるようなデッキといえば「コンボ」である。
このように、相性を考えるときには
「相手となるデッキに対抗する手段が多い」
または、「相手に入っているカードが無駄になることが多い」
ということから考えなくてはいけない。
3)コンボ < コントロール(低速パーミッション)
ではコンボを食えるデッキとはなんだろうか?
コンボにはキーとなるカードが必ずあり、それを打ち消す・取り除くことによって
デッキを機能不全にしてしまうようなデッキを、コンボ・デッキは苦手としている。
つまり、カウンター(打ち消し・ライブラリー除去)呪文を中心に据えた「コントロール」に弱い。
最近のコントロールはパーミッションと呼ばれる打消し主体のものから、
ドロー呪文やマナ加速によって、アドバンテージを稼いで優位性を保ちつつ
大きいマナ・コストの呪文1〜2枚で勝利をつかむようなデッキが多く見られる。
(スタンダード環境では特に顕著である)
4)コントロール(低速パーミッション) < アグロ・コントロール(テンポ)
さて一見弱点が無いように見えるコントロールだが、
その特性として、どうしても低速になりがちである。
そこでアドバンテージを取られない始めのターンのうちに
ダメージ・クロックを展開し、除去呪文は軽量の打ち消しで耐えるという
デッキが開発された。それがアグロ・コントロールである。
早いターンでの決着を想定しているため、テンポなどと呼ばれたりもするが
これは「tempo-advantage」という言葉と誤解される恐れもある。
5)アグロ・コントロール(テンポ) < ビートダウン
そのアグロ・コントロールだが、クリーチャーと打ち消し呪文の2面性を
持っているため、どうしても生物の質が落ちてしまう。
そのため、本質的にビートダウンには相性がわるい。
軽量の打ち消し呪文も、ビートダウンに対してはあまり良い影響をもたらさない。
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これでデッキ・タイプがぐるっと一回りした。
これら5つのデッキタイプを、時計のように円の周りに配置したものが、
「メタ・クロック」(Metagame Clock)である。
(* 記事トップの図参照)
メタ・クロックは通常の時計と同じく、時計回りに見ることができる。
メタの変遷は、現在メジャーなデッキタイプから始まり、それから順次
それらを『食える』デッキへと変遷していく。
たとえば、現在優勢なのがビートダウンであれば、次の時間は
ボード・コントロールのデッキへと変遷していくのである。
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では、メタ・クロックを具体的に見てみよう。
9版環境下のスタンダード(第9版+コールドスナップ+RAVブロック+TSPブロック)
での主だったデッキを分類する。
・イゼットトロン(コントロール)
・青黒コントロール(コントロール)
・ナルコブリッジ(コンボ)
・プロジェクトX(ビートダウン(注1))
・コラーシュ黒単(アグロ・コントロール)
・グルールビート(ビートダウン)
・赤単スライ(ビートダウン)
・白緑赤ズー(ビートダウン)
・ソーラーフレア(ボード・コントロール)
・赤白青トリコロール(ボード・コントロール)
・ドラゴンストーム(コンボ)
・オルゾフコントロール(ボード・コントロール)
・メガハンデス(アグロ・コントロール)
(注1)プロジェクトXは基本はビートダウンだが、コンボ要素が含まれている。
便宜上、ビートダウンとする。
分類はややイイカゲンなのをお許し願いたい。
デッキの細部はプレイヤーの調整によって異なるので、
一概にそうともいえないものも含まれている。
これらをメタ・クロックに入れていこう。
00分にビートダウンの代表デッキ・・・ここではグルールビート・・・を入れて、
あとは順次当てはめていく。ならべるのは大雑把でかまわない。
同じデッキ分類に当てはまるときは、前後のデッキ特性を見て考える。
たとえば、赤単ビートダウンよりも、白緑赤ズーのほうが
より「ボード・コントロール」デッキに近い。
当てはめた結果はトップの図のようになる。
さて、これをどう読めばよいだろうか。
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メタ・クロックの読み方は、基本的には自分の出ようとする大会を
良く知っておかなくてはならない。そして、そこでの過去のメタを読み、
それをメタ・クロックに当てはめ、「15分だけクロックを進める」のである。
5分類したデッキはそれぞれジャンケンのようになっているが、
実際のデッキはそのように綺麗に分類できない。
そこで、15分だけずらすと、ちょうどそれらの苦手となるデッキ分類を
指すようになる。これでメタを読めばよい。
-------------------------------------------
メタ・クロックは各自で調整ができる。
やり方は全く同じで、Tier1またはTier2のデッキを挙げて、
それらを5分類し、メタ・クロックに貼り付ければよい。
メタ・クロックはたまに歪むことがある。
5分類の中で明らかに弱いものがあるだろうし、
カードプールの関係でそのデッキタイプが組めない・組みにくいという
レギュレーションも確実に存在する。
たとえば、スタンダードでは「軽い打消し呪文」が少ないために、
アグロ・コントロールは組みにくい。
そうなると、勢力が少ないタイプの「15分前」のデッキを見ると、
そのレギュレーションにおいての暫定最強デッキが見つかる。
これによるメタ変遷もあるだろうし、新しいデッキを模索するプレイヤーは
このようなメタの読み方もできるだろう。
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来週の記事予告。
メタ論議は具体性に欠けることが多く、机上の空論になりがちなので、
次回は、筆者自身が10版のスタンダードについてメタ・クロックを書き、
それに基づいたデッキ構築と、その結果までをレポートする予定です。
というわけで来週の日曜日はBMに出没しますので、名古屋のみなさんはお手柔らかに。
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そんなところで。