多忙にかまけてしまい、コメントに目を通すのを怠っていました。申し訳ありません。

----

さて、前回のFMQの回答に対し、このようなコメントがありました。


出題者は『Pに2ダメージを与え、Qに3ダメージを与える。』を一つのイベントとして扱っているが、
特定のオブジェクトに与えられるダメージのみに働く置換効果からの観点では、
これは明らかに二つのべつのイベントであって、その解答のような結論にはならない。
(プレインズウォーカーに4点のダメージを与えられる)。


これを見て、なるほどと思いましたので、自分の考えをつらつらと書いてみます。

----

1)おいらが書いた表現上のミス

最初に考えさせられたのは、コメント内でおいらの回答を引用した部分だった。

  『Pに2ダメージを与え、Qに3ダメージを与える。』

確かにこの書き方では、ダメージを与えるイベントが2つあると判断してしまう。
この場合、コメントでの指摘は正しく、プレインズウォーカーに2点与えた後に
Qが《危害のあり方/Harm’s Way》で置換したダメージを、さらにプレインズウォーカーへ振り換える
ことが可能である。従って、プレインズウォーカーには計4点が与えられる。

 
……だが、ダメージを与えるイベントが2つである、という点がひっかかった。

----

2)イベントは1つ? 2つ?

《ゴブリン弩弓隊/Goblin Artillery》のテキストは以下の通り。

{T}: Goblin Artillery deals 2 damage to target creature or player and 3 damage to you.


《ゴブリン弩弓隊》の起動型能力の効果によって与えられる2点と3点のダメージは、
同時に与えられるだろうか? それとも別々だろうか?
また、2点のダメージを与えるイベントと、3点のダメージを与えるイベントは別々なのだろうか?

これに対する答えを出す前に、結論づけられている事象から考えてみる。

----

3) 《紅蓮地獄/Pyroclasm》と《危害のあり方/Harm’s Way》

プレイヤーAとBが対戦している。

プレイヤーAが《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》と《国境地帯のレインジャー/Borderland Ranger》
をコントロールしている。
プレイヤーBは《大蜘蛛/Giant Spider》をコントロールしている。

プレイヤーBが《紅蓮地獄/Pyroclasm》を唱えた。
それに対応して、Aは《危害のあり方/Harm’s Way》を、《大蜘蛛》を対象に唱えた。
Aは《危害のあり方》の解決時に、ダメージの発生源としてスタック領域の《紅蓮地獄》を指定した。

さて、《紅蓮地獄》を解決する段になった場合に、Aは自分のコントロールするクリーチャー2体を
両方とも破壊されることが無いようにできるだろうか?

皆さんもご存じの通り、Aが《ルーン爪の熊》と《国境地帯のレインジャー》の両方を
生き残らせることは可能である。

この場合、《危害のあり方》による置換効果によって、《紅蓮地獄》から与えられる2点のダメージは、
代わりに対象となった《大蜘蛛》へ与えられる。

つまり、置換効果を適用した後、《紅蓮地獄》によって与えられるダメージは以下のようなイベントとなる。

 『《ルーン爪の熊》、《国境地帯のレインジャー》、《大蜘蛛》はそれぞれ2点のダメージを受ける。』
 ↓
 『《ルーン爪の熊》は1点、《国境地帯のレインジャー》は1点、《大蜘蛛》は4点のダメージを受ける。』

以下、ダメージは結果に変換され、ダメージのイベントが発生する。

ここで読み取ってもらいたいのは、元々何体のクリーチャーが戦場に存在していようとも、
《紅蓮地獄》によるダメージのイベントは1つ、ということである。


----

4) 文章が指示するもの

もう一度、《ゴブリン弩弓隊》のテキストを見てみよう。《紅蓮地獄》も併記する。

{T}: Goblin Artillery deals 2 damage to target creature or player and 3 damage to you.

Pyroclasm deals 2 damage to each creature.


文章で示された指示は両者とも同じであり、これにより発生するイベントは1つである。
例え、実際にダメージを受けるオブジェクトがいくつあろうとも、これにより発生するイベントは
動詞 "deals" で示されたイベント1つのみである。

つまり、《ゴブリン弩弓隊》による2点と3点のダメージは同時に与えられ、かつ、
それらを別々のイベントとして捉えることはできない。

----

5) 文章の順番

同じような状況だが、文章の書き方と順番が重要となる状況を記載しておく。

プレイヤーAは《吠えたけるバンシー/Howling Banshee》と《沼の悪霊/Bog Wraith》をコントロールしている。

プレイヤーBは《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》を唱え、モードを『両方』と選択し、
飛行を持つクリーチャーの対象を《吠えたけるバンシー》、
飛行を持たないクリーチャーの対象を《沼の悪霊》にした。

それに対応し、プレイヤーAは《危害のあり方》を唱えた。対象はプレイヤーB本体である。
解決時に、Aはダメージの発生源を、スタック領域の《枝分かれの稲妻》に指定した。

さて、Aは2体のクリーチャーを両方とも生き残らせることができるだろうか?

 
 
……これは不可能である。

《枝分かれの稲妻》のテキストを見ると、

 Choose one or both - Branching Bolt deals 3 damage to target creature with flying;
  and/or Branching Bolt deals 3 damage to target creature without flying.

とある。文章を見ると、これによるダメージのイベントは2つであると読める。
順番通りに解決すると、まず

 『《吠えたけるバンシー》は3点のダメージを受ける』

というイベントが最初の状態である。これに《危害のあり方》の置換効果が適用される。

 『《吠えたけるバンシー》は1点、プレイヤーBは2点のダメージを受ける』

これが結果に変わる。

次に、『《沼の悪霊》は3点のダメージを受ける』というイベントが起こるが、
これに関して適用できる置換効果はもう無いので、そのまま結果に変わる。

最終的に、《吠えたけるバンシー》は生き残るが、《沼の悪霊》は致死ダメージを受けて破壊される。


----
そんなところで。


お気に入り日記の更新

お気に入り日記

登録したユーザー
102
登録されたユーザー
1010

最新のコメント

日記内を検索