マジックというゲームにおいて、「唱える/cast」というのは重要な行動です。呪文を唱えるためには、CR601に示される手順を踏む必要があります。・・・が、ほとんどの場合は細かいところまで気にする必要はありません。何を唱えるかを宣言し、対象を決め、コストを支払えばよいのです。ところが、唱えるということをきちんと考えないと、以下のような問題で困ってしまいます。
問)NAPの《イクサランの束縛/Ixalan’s Binding》によって、APの《不死身、スクイー/Squee, the Immortal》が追放されている。APはこの追放されている《不死身、スクイー》を唱えることができるか?
この問題に対して答えを出す前に、「唱える」、いや、「唱え始める」ということに関して考えていきましょう。
*唱えることができる/できない
カードを呪文として唱えられるかどうかは、ルール、つまりCRに定義されています。(以下、特に言及されていないかぎり、「ルール」とは「CR」を指します)例えば、優先権を持っていないとカードを唱えることはできません。また、クリーチャーやソーサリーは唱えるための状況がさらに限定されています。
一方、ゲーム内の効果によってそれが上書きされることがあります。例えば、《ヤヘンニの巧技》のように、呪文の解決中にカードを唱えてもよい、という効果があります。呪文の解決中ですから、プレイヤーは優先権をもっていませんし、スタック上にはまだ解決中の呪文があります。それにもかかわらず、あなたはソーサリー・カードを唱えることができます。
まとめると、呪文を唱えることができる、できないというのは、以下の4種類の状態があります。
・「ルールによって唱えることができる」
・「ルールによって唱えることができない」が「効果によって唱えることができる」
・「ルールによって唱えることができない」
・「ルールによって唱えることができる」が「効果によって唱えることができない」
最終的に、上2つは唱えることができて、下2つは唱えることができません。
*《翻弄する魔道士/Meddling Mage》から逃げる
4つ目の状態、つまり効果によって唱えることができない、の良い例として、《翻弄する魔道士》が挙げられます。選ばれたカード名のカードを唱えることをできなくさせます。では、変異をもつカードを選ばれた場合、それを変異(=裏向き)で唱えることはできるでしょうか?
解答としては、これは唱えることができます。変異能力を用いてそれを唱える場合、まずそれを(スタックに移動させる前に)裏向きにします。そして、唱えられるかどうかをチェックしていました。当然、《翻弄する魔道士》選ばれたカード名ではないので、それを裏向きで唱えることができる、ということになります。
これからわかることは、「唱えることができない」という効果は、いつ適用されるのかという判断をしなくてはいけないことです。
*テーロス
テーロスではキーワード能力として、授与/Bestow が出てきました。これは、唱える際にオーラ呪文として唱えることを選んでも良い、というものです。授与はそれまでのカードと大きく異なる点がありました。それは、呪文を「唱えている間」に、カード・タイプが変化してしまう点です。クリーチャー・呪文として唱え始めたのに、唱え終わった後ではクリーチャーでないオーラ・呪文になっているわけです。
さて、「あなたはクリーチャー・呪文を唱えられない」という効果を受けている場合、あなたは授与能力を使ってオーラ・呪文を唱えることができるでしょうか?
残念ながら、この疑問に対する解決は、マジック・オリジンの改訂を待つことになります。
*オリジン
マジック・オリジンでは、CR601.2において大きな改訂が行われました。呪文を唱えることを大きく2つに分け、前半を「呪文を示すこと/proposal of the spell」、後半を「コストの決定と支払い/determination and payment of costs」としました。そのうえで、前半の最後にCR601.2eを追加し、そこで「その呪文が本当に唱えられるかどうか」を再チェックするようになりました。これにより、唱え始めることはできても、CR601.2eによってチェックされることによって唱えることを続けられなくなる、というケースが出てくるようになりました。
さきほどの授与の例を考えてみましょう。何であろうととりあえず唱え始めることができます。そして、唱えるための手順をCR601.2eまで進めた時点では、もうそれはオーラ・呪文です。再度チェックしても、それは「ルールによって唱えることができて」かつ効果によってなにも影響していません--禁止されているのはクリーチャー呪文です--ので、結局オーラ呪文として唱えることができます。
さて、オリジンでは同時にCR601.5が削除されました。この項目は唱え始める前に何かしら唱えることをできなくさせる効果があった場合、唱え始めることができない、という項目でした。が、これが削除されたことにより、「何であろうととりあえず唱え始めることができる」ことになりました。例えば、《翻弄する魔道士》で《稲妻》を指定されていたとしても、あなたは《稲妻》を唱え始めることはできます。そして、CR601.2eによってそれは唱えられないので、結局《稲妻》は唱えられず、巻戻ります。しかしこれはすぐ後の戦乱のゼンディカーで訂正されることになります。
*戦乱のゼンディカー
さて、「何であろうととりあえず唱え始めることができる」ことで、例えば、対戦相手のライブラリーからカードを唱えられる効果があったとして、「とりあえず唱えることを宣言して、唱えることができないので巻き戻す」ことを繰り返し、結果的に相手のライブラリーを全て閲覧することが行えるようになっていました。
これは非常に奇妙なので、CR601.2自体が変更され、「唱えることを始める時点では、それが適正に唱え始められる必要がある。それをできなくさせる効果があった場合、CR601.2eの時点でそれをチェックする」となりました。
前述した4つの場合分けを再掲しましょう。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」 →(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができるが、CR601.2eのチェック時点で唱えることを続けられなくなる)
この分類で「唱えることが適正かどうか」をチェックするのが、唱え始めとCR601.2eの時点でズレが生じているのがわかると思います。さて、次は異界月です。
*異界月
上の4分類の2つ目と3つ目を見てみましょう。ルールによって本来唱えることができない呪文が、効果によって唱えることができる場合に、唱え始めることができる・できないという差が生まれます。ここで、瞬速でも唱えることができるカードの扱いが問題になりました。例えば、《総崩れ》はソーサリーであり、相手のターンには唱えられませんが、追加で{2}支払うことを選ぶと、瞬速を持つかのように唱えられます。が、「追加のコストを支払う」ことを選ぶのは、CR601.2bの段階なので、唱え始めることができないと、そもそもその支払い方を選ぶことすらできません。つまり、ルールにより唱えることができません。おや? 機能していませんね。
これを解決するために、異界月でCR601.3が新たに挿入されました。この時点では、呪文がコストの支払いや、その後の選択などによって瞬速を持ち得る場合、瞬速を持つかのように唱え始めることができるようになりました。
つまり、4分類の1つに亜種が含まれるようになりました。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」
または「唱えている間の選択をすることにより効果によって唱えることができる」
→((選択があるならばそうすることにして)唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができるが、CR601.2eのチェック時点で唱えることを続けられなくなる)
以後、カラデシュ、イクサラン、ドミナリアでも、CR601の細かいところで修正が加えられましたが、「唱え始められるかどうか」については未着手でした。
*《不死身、スクイー》
ようやくもともとの問題に立ち返ることができるようになりました。
問)NAPの《イクサランの束縛/Ixalan’s Binding》によって、APの《不死身、スクイー/Squee, the Immortal》が追放されている。APはこの追放されている《不死身、スクイー》を唱えることができるか?
4分類からすると、(通常の)ルールにより追放領域のカードは唱えることができませんが、《不死身、スクイー》の効果により唱えることができます。つまり唱え始めることができます。そしてCR602.1aの時点で《不死身、スクイー》は追放領域からスタック領域に移動します。その後。CR601.2eのチェックの時点でもうそれは《イクサランの束縛》によって追放されたカードではないため、《不死身、スクイー》を唱えることを妨げる効果は何もありません。従って唱えることができ、スクイーはやはり不死身であるのです。めでたしめでたし。
・・・とはいきませんでした。効果により唱えることができないカードを「唱え始める」ことができてしまうのは、直感的ではありません。また、Magic Arenaでは、同じ状況で《不死身、スクイー》は唱えられないようになっていました。
原因の根本は、4分類の4番目で、「ルールによって唱えることができるが、効果によりできない」ことを、CR601.2eのみで判断しているためです。
*バトルボンド
バトルボンドでの更新で、CR601.2で「唱えられなくする効果をCR601.2eでチェックする」という文が消滅しました。これにより、唱え始める時点で「唱えられない効果」を考慮できるようになりました。また、効果によって唱えることはできないが、後からの選択によってはその効果が適用されなくなる場合、効果を無視して唱え始めることができるようになりました。
CR601.3aの例示は、典型的でありわかりやすいものになっています。《虚空の選別者》を対戦相手がコントロールしている場合、あなたは点数で見たマナ・コストが偶数の呪文を唱えることができません。あなたは《とどろく雷鳴》を唱えようとします。それは唱え始める時点では点数で見たマナ・コストは2なので偶数ですが、その後のXの選択によっては偶数でなくなります。従って、「唱えられない効果」を無視して唱え始めることができ、例えばX=3を指定して唱えることを完遂できます。
*現在の4分類
4分類は以下のようになりました。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」
または「唱えている間の選択をすることにより効果によって唱えることができる」
→((選択があるならばそうすることにして)唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができないが、(選択によって効果の適用外になるならばそうすることにして)できない効果を無視して唱え始めることができる)
もともとの問題、《イクサランの束縛》と《不死身、スクイー》は、4番目の分類にあたり、選択によって効果の適用外になることがないので、結局唱え始めることができません。こうしてMagic Arena の挙動と、現実の紙Magicの挙動が一致することになりました。
*まとめ
唱えることができる/できないというのは、昔から大幅に変化したわけではなく、直感的でない部分を直してきた結果、今のような状態になっています。ややこしいとは思いますが、現実に行われるゲームで問題になることは99.9%無いでしょう。ただ、新しいセットが登場するたびに、既存のカードとの組み合わせの解釈で議論が発生し、妙なところにスポットライトが当てられることもあるのです。面白いと思いましたら、お近くのジャッジにご相談を。
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そんなところで。
問)NAPの《イクサランの束縛/Ixalan’s Binding》によって、APの《不死身、スクイー/Squee, the Immortal》が追放されている。APはこの追放されている《不死身、スクイー》を唱えることができるか?
この問題に対して答えを出す前に、「唱える」、いや、「唱え始める」ということに関して考えていきましょう。
*唱えることができる/できない
カードを呪文として唱えられるかどうかは、ルール、つまりCRに定義されています。(以下、特に言及されていないかぎり、「ルール」とは「CR」を指します)例えば、優先権を持っていないとカードを唱えることはできません。また、クリーチャーやソーサリーは唱えるための状況がさらに限定されています。
一方、ゲーム内の効果によってそれが上書きされることがあります。例えば、《ヤヘンニの巧技》のように、呪文の解決中にカードを唱えてもよい、という効果があります。呪文の解決中ですから、プレイヤーは優先権をもっていませんし、スタック上にはまだ解決中の呪文があります。それにもかかわらず、あなたはソーサリー・カードを唱えることができます。
まとめると、呪文を唱えることができる、できないというのは、以下の4種類の状態があります。
・「ルールによって唱えることができる」
・「ルールによって唱えることができない」が「効果によって唱えることができる」
・「ルールによって唱えることができない」
・「ルールによって唱えることができる」が「効果によって唱えることができない」
最終的に、上2つは唱えることができて、下2つは唱えることができません。
*《翻弄する魔道士/Meddling Mage》から逃げる
4つ目の状態、つまり効果によって唱えることができない、の良い例として、《翻弄する魔道士》が挙げられます。選ばれたカード名のカードを唱えることをできなくさせます。では、変異をもつカードを選ばれた場合、それを変異(=裏向き)で唱えることはできるでしょうか?
解答としては、これは唱えることができます。変異能力を用いてそれを唱える場合、まずそれを(スタックに移動させる前に)裏向きにします。そして、唱えられるかどうかをチェックしていました。当然、《翻弄する魔道士》選ばれたカード名ではないので、それを裏向きで唱えることができる、ということになります。
これからわかることは、「唱えることができない」という効果は、いつ適用されるのかという判断をしなくてはいけないことです。
*テーロス
テーロスではキーワード能力として、授与/Bestow が出てきました。これは、唱える際にオーラ呪文として唱えることを選んでも良い、というものです。授与はそれまでのカードと大きく異なる点がありました。それは、呪文を「唱えている間」に、カード・タイプが変化してしまう点です。クリーチャー・呪文として唱え始めたのに、唱え終わった後ではクリーチャーでないオーラ・呪文になっているわけです。
さて、「あなたはクリーチャー・呪文を唱えられない」という効果を受けている場合、あなたは授与能力を使ってオーラ・呪文を唱えることができるでしょうか?
残念ながら、この疑問に対する解決は、マジック・オリジンの改訂を待つことになります。
*オリジン
マジック・オリジンでは、CR601.2において大きな改訂が行われました。呪文を唱えることを大きく2つに分け、前半を「呪文を示すこと/proposal of the spell」、後半を「コストの決定と支払い/determination and payment of costs」としました。そのうえで、前半の最後にCR601.2eを追加し、そこで「その呪文が本当に唱えられるかどうか」を再チェックするようになりました。これにより、唱え始めることはできても、CR601.2eによってチェックされることによって唱えることを続けられなくなる、というケースが出てくるようになりました。
さきほどの授与の例を考えてみましょう。何であろうととりあえず唱え始めることができます。そして、唱えるための手順をCR601.2eまで進めた時点では、もうそれはオーラ・呪文です。再度チェックしても、それは「ルールによって唱えることができて」かつ効果によってなにも影響していません--禁止されているのはクリーチャー呪文です--ので、結局オーラ呪文として唱えることができます。
さて、オリジンでは同時にCR601.5が削除されました。この項目は唱え始める前に何かしら唱えることをできなくさせる効果があった場合、唱え始めることができない、という項目でした。が、これが削除されたことにより、「何であろうととりあえず唱え始めることができる」ことになりました。例えば、《翻弄する魔道士》で《稲妻》を指定されていたとしても、あなたは《稲妻》を唱え始めることはできます。そして、CR601.2eによってそれは唱えられないので、結局《稲妻》は唱えられず、巻戻ります。しかしこれはすぐ後の戦乱のゼンディカーで訂正されることになります。
*戦乱のゼンディカー
さて、「何であろうととりあえず唱え始めることができる」ことで、例えば、対戦相手のライブラリーからカードを唱えられる効果があったとして、「とりあえず唱えることを宣言して、唱えることができないので巻き戻す」ことを繰り返し、結果的に相手のライブラリーを全て閲覧することが行えるようになっていました。
これは非常に奇妙なので、CR601.2自体が変更され、「唱えることを始める時点では、それが適正に唱え始められる必要がある。それをできなくさせる効果があった場合、CR601.2eの時点でそれをチェックする」となりました。
前述した4つの場合分けを再掲しましょう。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」 →(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができるが、CR601.2eのチェック時点で唱えることを続けられなくなる)
この分類で「唱えることが適正かどうか」をチェックするのが、唱え始めとCR601.2eの時点でズレが生じているのがわかると思います。さて、次は異界月です。
*異界月
上の4分類の2つ目と3つ目を見てみましょう。ルールによって本来唱えることができない呪文が、効果によって唱えることができる場合に、唱え始めることができる・できないという差が生まれます。ここで、瞬速でも唱えることができるカードの扱いが問題になりました。例えば、《総崩れ》はソーサリーであり、相手のターンには唱えられませんが、追加で{2}支払うことを選ぶと、瞬速を持つかのように唱えられます。が、「追加のコストを支払う」ことを選ぶのは、CR601.2bの段階なので、唱え始めることができないと、そもそもその支払い方を選ぶことすらできません。つまり、ルールにより唱えることができません。おや? 機能していませんね。
これを解決するために、異界月でCR601.3が新たに挿入されました。この時点では、呪文がコストの支払いや、その後の選択などによって瞬速を持ち得る場合、瞬速を持つかのように唱え始めることができるようになりました。
つまり、4分類の1つに亜種が含まれるようになりました。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」
または「唱えている間の選択をすることにより効果によって唱えることができる」
→((選択があるならばそうすることにして)唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができるが、CR601.2eのチェック時点で唱えることを続けられなくなる)
以後、カラデシュ、イクサラン、ドミナリアでも、CR601の細かいところで修正が加えられましたが、「唱え始められるかどうか」については未着手でした。
*《不死身、スクイー》
ようやくもともとの問題に立ち返ることができるようになりました。
問)NAPの《イクサランの束縛/Ixalan’s Binding》によって、APの《不死身、スクイー/Squee, the Immortal》が追放されている。APはこの追放されている《不死身、スクイー》を唱えることができるか?
4分類からすると、(通常の)ルールにより追放領域のカードは唱えることができませんが、《不死身、スクイー》の効果により唱えることができます。つまり唱え始めることができます。そしてCR602.1aの時点で《不死身、スクイー》は追放領域からスタック領域に移動します。その後。CR601.2eのチェックの時点でもうそれは《イクサランの束縛》によって追放されたカードではないため、《不死身、スクイー》を唱えることを妨げる効果は何もありません。従って唱えることができ、スクイーはやはり不死身であるのです。めでたしめでたし。
・・・とはいきませんでした。効果により唱えることができないカードを「唱え始める」ことができてしまうのは、直感的ではありません。また、Magic Arenaでは、同じ状況で《不死身、スクイー》は唱えられないようになっていました。
原因の根本は、4分類の4番目で、「ルールによって唱えることができるが、効果によりできない」ことを、CR601.2eのみで判断しているためです。
*バトルボンド
バトルボンドでの更新で、CR601.2で「唱えられなくする効果をCR601.2eでチェックする」という文が消滅しました。これにより、唱え始める時点で「唱えられない効果」を考慮できるようになりました。また、効果によって唱えることはできないが、後からの選択によってはその効果が適用されなくなる場合、効果を無視して唱え始めることができるようになりました。
CR601.3aの例示は、典型的でありわかりやすいものになっています。《虚空の選別者》を対戦相手がコントロールしている場合、あなたは点数で見たマナ・コストが偶数の呪文を唱えることができません。あなたは《とどろく雷鳴》を唱えようとします。それは唱え始める時点では点数で見たマナ・コストは2なので偶数ですが、その後のXの選択によっては偶数でなくなります。従って、「唱えられない効果」を無視して唱え始めることができ、例えばX=3を指定して唱えることを完遂できます。
*現在の4分類
4分類は以下のようになりました。
・「ルールによって唱えることができる」
→(唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」かつ「効果によって唱えることができる」
または「唱えている間の選択をすることにより効果によって唱えることができる」
→((選択があるならばそうすることにして)唱え始めることができる)
・「ルールによって唱えることができない」
→(唱え始めることができない)
・「ルールによって唱えることができる」かつ「効果によって唱えることができない」 →(唱え始めることができないが、(選択によって効果の適用外になるならばそうすることにして)できない効果を無視して唱え始めることができる)
もともとの問題、《イクサランの束縛》と《不死身、スクイー》は、4番目の分類にあたり、選択によって効果の適用外になることがないので、結局唱え始めることができません。こうしてMagic Arena の挙動と、現実の紙Magicの挙動が一致することになりました。
*まとめ
唱えることができる/できないというのは、昔から大幅に変化したわけではなく、直感的でない部分を直してきた結果、今のような状態になっています。ややこしいとは思いますが、現実に行われるゲームで問題になることは99.9%無いでしょう。ただ、新しいセットが登場するたびに、既存のカードとの組み合わせの解釈で議論が発生し、妙なところにスポットライトが当てられることもあるのです。面白いと思いましたら、お近くのジャッジにご相談を。
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そんなところで。
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