『アモンケット』リリースに伴う総合ルール(CR)の更新点です。
原文)http://magic.wizards.com/en/articles/archive/feature/amonkhet-update-bulletin-comprehensive-rules-changes-2017-04-28
注意)上記原文の逐字訳ではなく、要訳です。筆者個人の考察や感想は行頭に#が付きます。
赤文字は新規項番です。
青文字は既存項番の変更です。
特筆しない限り、新規項番/項番消失による番号ズレは記載しません。
104.2b, 104.3h(多人数戦での勝利)
多人数戦では長らく、「あなたはゲームに勝利する」ことが、「他全員が敗北する」ということになっていました。これは、影響範囲という概念があるゲーム(皇帝戦など)においては、あなたが勝利したことが、他の影響範囲外のプレイヤーにとっては、本当に何も関わり合いがないからです。しかし、影響範囲というものに触れていないプレイヤーにとっては、単に混乱を生じさせるだけでした。
このルールは改定され、「他全員が敗北する」のは、『影響範囲限定』選択ルールを用いている場合のみ、となりました。これに伴う変更の文言が修整されています。
#通常の統率者戦では、もう「あなたは負けない」という効果で、対戦相手の「あなたは勝利する」という効果を止めることはできない。
#大乱闘戦は、影響範囲を伴うルールであるので、これまでと同様である。
108.2(カードの定義)
この項番では、「カード」という単語がテキスト内とルール上で表現される場合の意味を定義しています。ここでは、2つのことを一度にやろうとしていました。1つは、「カード」が何であるかを説明していました。もう1つは、テンプレート内で「カード」という単語がどのように使用されるかを説明していました。今回の変更では、テンプレート内で使用される情報を削除し、この項番では「カード」が何であるかのみを述べるようにされました。
115.2(特別な行動)
特別な行動/Special Actionは、良いものです。スタックを経由することなく何かを行えます。
ここでは2つの変更が行われました。1つは、「あなたがインスタントを唱えられるときならいつでも、あなたは《待ち受ける禿鷹》を捨ててもよい」という文言に関して、これが特別な行動であるということを追加しました。もう1つは、特別な行動であっても、タイミングに制限がかかっているものがあることを追加しました。
#《待ち受ける禿鷹/Circling Vultures》のためだけにCR115.2eが追加されている。
#後者の例としては《チャネル/Channel》がある。通常、後から何かができる特別な行動は、プレイヤーが優先権を持っている時にできる。しかし、《チャネル》の場合、優先権を持たない場合……例えば、《マナ漏出》でマナを要求された場合など……でも、「マナ能力を起動できる」のであれば使用できる。
119.3b, 119.3d(カウンターを置くのは誰?)
これまでは、カウンターを置く数は注視してきましたが、誰がカウンターを置くのかについては無頓着でした。アモンケットでは、誰がカウンターを置くのかをはっきりさせないといけないのですが、萎縮や感染といった場合に誰がカウンターを置くのかについてはわかりませんでした。
今回の変更で、萎縮や感染によるダメージによって、クリーチャーにカウンターを置く場合、そのダメージの発生源のコントローラーがカウンターを置くようになりました。
#例えば、あなたの《ぎらつかせのエルフ》が対戦相手のクリーチャーにダメージを与えるなら、あなたの《スカラベの巣》の能力が誘発する。カウンターを置いたのはあなたである。
121.6a(戦場に出る際にカウンターを伴う)
先ほどの項目と関連して、戦場に出る際にカウンターを伴って出る場合、それらのカウンターは、そのオブジェクトのコントローラーが置いたことになりました。
201.3(カード名を選ぶ)
この項目は「カード名1つを選ぶ」ことに関して書かれています。カード名を選ぶ際に、どのような制限がかかるのか、より明確になるように文章が変更されました。オラクルのテンプレート変更も参照してください。
#CRの例より。《没収》には「アーティファクト・カード名1つを選ぶ」とある。プレイヤーは、そのゲームのフォーマットで適正などのアーティファクト・カードのカード名を選んでもよい。戦場に出ている《島》が何らかの効果によりアーティファクトになっていたとしても、「島」を選ぶことはできない。カードに特性を与えるルールや効果は無視する。
205.3h(エンチャントのサブタイプ一覧)
「カルトーシュ/Cartouche」が追加されました。
205.3m(クリーチャーのサブタイプ一覧)
「ジャッカル/Jackal」が復活しました。
400.7i(領域移動の例外)
カードが新しい領域に移動すると、通常は以前の記憶を失い、前の領域にあったそれとは何も関わりが無くなります。これにはいくつかの例外がありますが、今回の変更によりマッドネスに関して追加されました。マッドネス持ちのカードを捨て追放し、そのカードを唱えなかった場合、ゲームはそのカードが「捨てられた」ことを追跡できます。
#通常、領域移動が起こると以前の記憶が無くなる。マッドネスで手札→追放の場合、マッドネスというルールにより追放されたカードを追跡することができる。その後、唱えずに追跡→墓地と移動した場合、何の変哲もない領域移動に見えるが、実はこれはマッドネスの効果の内、と捉えることもできる。今回の変更はこの部分を明確化したもの。
508.1g(攻撃時に支払う選択的コスト)
アモンケットにある、「攻撃するに際し、あなたはこれを督励してもよい」というのは、攻撃し、かつ、支払わなくてもよい、史上初の選択的コストです。今回の変更では、攻撃クリーチャーの指定に際し、このような選択的コストを支払うかどうかを選ぶ段階が追加されました。
603.12(再帰誘発型能力)
この項目では、《心臓貫きのマンティコア》に見られる、再帰誘発型能力/reflexive triggered abilities という新しい誘発型能力の一種を説明しています。再帰誘発型能力は、遅延誘発型能力と似たような挙動を示します。ただ違う点は、再帰誘発型能力には遅延誘発型能力のような「ディレイ」が無く、再帰誘発型能力を生成した呪文や能力の解決中に、条件を満たしたどうかを参照します。
#遅延誘発型能力は、「呪文や能力の解決によって、誘発型能力を(遅延して)予約する」もの。
#再帰誘発型能力は、「呪文や能力の解決によって、その呪文や能力の解決中に誘発するかどうかを(再帰して)チェックする」もの。
614.16(「できない/Can’t」)
しばしば、あなたは(効果によって)何かができなかったりする。何も起こらない場合もある。何年もの間、カードで何かが起こらない場合、どのようにするかを個別に判断してきました。これらのルーリングをこの項目に集約し、何かが起こらない場合にどうするか、簡単に決められるようにしました。
#「できない/Can’t」という場合、それ事態は置換効果ではないが、似たような挙動を示す。
#「できない」効果は、しかるべきイベントが発生するよりも前になくてはいけない。これは置換効果でも同じである。置換されるべきイベントが発生するよりも前に、置換効果がないといけない。
#例)対戦相手の唱えた呪文を《中断/Abeyance》でなかったことにはできない。
#その他、イベントが「できない」場合や、パーマネントが戦場に出「れない」場合もある。考慮する機会はおそらく少ないが、CR614.16 は一つの指標となる。
616.1f(置換効果の適用順で考慮するべきこと)
この項目はかなりの重箱の隅をつついている。あなたがトークンを生成し、そのトークンは戦場に出る際に何かのコピーになる効果(《多面相の侍臣》など)と、あなたが生成するトークンの数が倍になる効果(《選定された行進》など)があったとする。この2つの効果、どっちを先に適用するだろうか?
これまではこのような効果が同時に話題にあがることはなかったので、ルールはそれに応えられるようにはできていませんでした。そこで、このような場合には、まずトークンの数を増やす効果が先になるようにルールを作成しました。
#結局のところ、例の場合だと、《多面相の侍臣》の不朽によるトークンが2つ生成され、それらは別々のクリーチャーのコピーになることができる。
701.37
督励する/Exert がキーワード処理に追加されました。
702.1b(キーワード能力内の変数)
《火山の乱暴者/Volcano Hellion》のエコー能力が誘発した後、対応してあなたがライフを失ったら?
《卑血の芙巳子/Fumiko the Lowblood》がブロックした後、対応して攻撃側が何かしたら?
分割カードを対象に《瞬唱の魔道士》をプレイして、そのカードの片側を墓地からプレイしたらコストはどうなる?
このような疑問に答えるため、キーワード能力内で変数を扱う場合のルールが変更されました。
変数は常時再計算され、必要なら解決時に「固定」されます。
#《火山の乱暴者》の場合、エコー能力の解決時に、ライフを参照する。
#《卑血の芙巳子》の場合、武士道能力の解決時に、攻撃クリーチャーを数える。
#《瞬唱の魔道士》で分割カードをフラッシュバックにより唱える場合、コストは唱えるべき片側を参照する。
702.28d(サイクリングするか捨てるたび)
サイクリングに触れていない新しいプレイヤーのために、「サイクリングするか捨てるたび」という表現を使うようにしました。しかしこの表現は、「サイクリングして」「カードを捨てた」ということで、2回誘発するような印象を与えてしまいました。ヤバい! 誤解を解かなきゃ! というわけでこの項目で、そのような場合でも1回しか誘発しないように説明をすることにしました。
702.101(融合)
分割カードの扱いが変更したのを受けて、融合の表現も直されました。機能的な変更はありません。
702.126
余波/Aftermath が追加されました。
702.127
不朽/Embalm が追加されました。
708(分割カード)
分割カードに関しては書き換えられた項目が多いです。変更としては少しだけで、そのコンセプトは単純です。時には一緒くたに考慮し、時には別々に考えていた2組の特性があり、場合によって色々な比較をしていました。しかし、特性をどのように処理するかを理解することは困難でした。
ここでの変更は、分割カードにある2つの半分の特性を合わせて、1組の特性としたことです。
この項目自体を大幅に変更したので、随分と変わっている印象を受けますが、ただそれだけです。
#分割カードの変更については下記の記事を参照して下さい。
# http://mtg-jp.com/publicity/0018651/
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#用語集については省略します。
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