"He who fights with monsters might take care lest he thereby become a monster."

*総合ルール

CRは総合ルールと銘打っているので、マジックというゲームにおける挙動については、ほとんどこれを紐解けば知ることができるようになっています。
例えば、リリース前のプレビュー・カードを見たとしても、そのテキストの内容から、そのカードがどのような動きをするのかが、だいたいわかるようになっています。ここで「だいたい」と書いたのは、ごく一部ではありますが、新しいキーワード能力、処理といったものに関しては既存のCRに載っていないので、想像はできてもそれが正確でないことがあるからです。

プレビュー期間中、新カードに関するCR的な質問をされるたびに、私は、こう前置きします。
「今のところは、こうです。」
これは、リリースノートやそれ以降のCR改訂によって、説明が正確でなくなることがあるからです。

*CRの綻び

さて、そんなCRではありますが、CRの内容を厳密に適用しても、ひどく歪んだ、おおよそ直感的とは言いがたい結果になることがあります。それらは放置されていることが多いのですが、概ね「放っておいてもほぼ全てのゲームにおいて支障にならない」からです。逆に言うと、とてもニッチでレアケースな状態でないと、問題になることがほとんど無い、とも言えます。

時たま、CRの改訂によって、抱えている「綻び」が直されることがあります。ですが、長きにわたって修正され得ない事象もあるので、「CRは全てを網羅していない」ということは、頭に置いておくべきことでしょう。そして、勘違いをしないように言っておきますが、ほぼ全て--99.99%のゲームにおいて--CRは直感と同様に答えを出してくれます。それゆえ、私たちは安心してゲームを楽しむことができるのです。

*深淵

以下に記載する事象については、CRを厳密に適用した結果、生じている齟齬、あるいは直感的でない事柄です。ジャッジを困らせるために記載しているのではありません--決して!

*無限に死ぬ
AとBが対戦している。AはBに、Aがオーナーである《死者の鏡/Lich’s Mirror》のコントロールを押し付けた。その後、Bは毒カウンターを10個得た状態になった。


状況起因処理においてBは敗北する。が、《死者の鏡/Lich’s Mirror》によってそれはイベントが置き換えられる。Bのパーマネントや墓地はライブラリーに戻り、手札を7枚引き直し、ライフを20にする……が、依然としてBは毒カウンターを10個持っている! そして《死者の鏡/Lich’s Mirror》はオーナーがAなので、これもまだBのコントロール下にある。
つまり、Bは敗北→《死者の鏡/Lich’s Mirror》による置き換え、の処理を延々と繰り替えることになる。プレイヤーに優先権は渡らず、ゲームは引き分けとなる。

プレイヤーに介入の余地がない繰り返し行動は、基本的に引き分けに終わります。

*終わらない競り
Bは《白金の天使》をコントロールしている。Aは《無道の競り/Illicit Auction》を《白金の天使》を対象に唱えた。解決時、互いは、すごい数の競りを行うことに……


《無道の競り/Illicit Auction》でライフを失うのは、競りが終わってからである。つまり、競りに勝って《白金の天使》を奪うことができれば、少なくとも敗北しない。
となると、最適行動は、とにかく相手の宣言した数よりも大きい数を言うことになる。つまり、互いの競りは終わらない。

このような場合、同じ状況を繰り返しているとみなして、CR716.3を適用し、APが異なる選択 -- 競りを降りる -- ことを選ばせる、ということになる。

*タイプなし

Aは《頭蓋囲い/Cranial Plating》をコントロールしている。
この状態で、Aは《機械の行進/March of the Machines》を戦場に出す。
その後、Aは《ニューロックの変成者/Neurok Transmuter》の2番目の能力を《頭蓋囲い》を対象に起動した。


最終的に、《頭蓋囲い》は、青のパーマネントであるが、カード・タイプがなくなる。以前からこの状況は知られているので、パーマネント・タイプが無くなったオブジェクトでも、戦場に残り続ける。(CR110.4c)

*調べさせる

Aは《精神隷属器/Mindslaver》を使って次のBのターンのコントロールを奪った。
その後、AはBに対して、「この店で明日行われる大会を調べてね。」と指示を出した。


Bwoコントロールしている間、何らかのルールやオブジェクトによりしなければならないすべての選択や決定をAが行う。(CR712.5)ここで、CRには以下の文章がある。

 100.6b プレイヤーは最寄りのイベントを探すため、Magic Store & Event Locator http://www.wizards.com/Locator/ を使用することができる。

CRに書いてあることを厳密に適用してしまうと、このようなこともできてしまう。もちろん、現実にこのようなことをさせるプレイヤーは居ないと思うが、そう言われた場合はジャッジを呼んで対処してもらうべきである。

#感の良い方ならお気づきかもしれないが、RELが競技以上の場合、もっと自体は深刻である。ロケーターを使う場合には、電子機器を使わなくてはいけないのだ! つまりいずれにせよジャッジを呼ぶ羽目になる。ちなみに、このような出来事で現実にジャッジを呼んだという事例は聞いたことがない。これからも無いだろう。

*トークン?

Aは《Chaos Orb》を《試作品の扉/Prototype Portal》によって追放した。
その後、《試作品の扉》を用いて、《Chaos Orb》のトークンを出し……
A「あ、トークンはこのテーブル自体な。」


CR上に使用されるトークンの形状については記載されていない。つまり、このような事態はCRだけでは解決できない。ゲームは現実において行われるものである。つまり、大会では大会ルール(MTR)も考慮する必要がある。

*かごの中のマナ能力

Aは《かごの中の太陽/Caged Sun》をコントロールしている。
Aは《生命と枝/Life and Limb》、《機械の行進/March of the Machines》、《奸謀/Conspiracy》によって、《かごの中の太陽》を土地にして、そのマナ能力を起動した。


《かごの中の太陽》は、追加のマナを発生させる能力を持つが、その条件が少し異なる。

 Whenever a land’s ability adds one or more mana of the chosen color to your mana pool, add one additional mana of that color to your mana pool.

単に土地の能力、と書かれているだけで、その土地の能力が何であるかは指していない。
例のように、自分自身が土地になってマナを出した場合、自分自身の能力が延々と解決されて、止められなくなる。つまり、無数のマナとともにゲームは引き分けに終わる。

この原因は、土地からマナが出た能力が起動型マナ能力であるならば、《かごの中の太陽》の能力はマナ能力(=誘発型能力)であるが、そうでない場合が示されていないことにある。

《かごの中の太陽》はマナ能力ではない! という主張もあるが、それも上の理由で示されることが原因になっている。土地の「能力」と書かれているために齟齬があるのだ。

*氷河跨ぎのワーム

Aは《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》を起動し、その間にライブラリーから《氷河跨ぎのワーム/Panglacial Wurm》を唱えた。唱えている間、マナ能力として《帰還した探検者、セルヴァラ/Selvala, Explorer Returned》を起動した。が、Bはそれについて意見をした。
B「一番上は本当にそのカードだったのかい? 」


《氷河跨ぎのワーム》は奇妙なカードの一つである。これを唱えることができる時点では、ライブラリーに触れてしまっているので、プレイヤーはその中身を見ることができてしまっている。ともすれば、例のようにして、任意のカードを公開したあげく、マナを出してそのカードを引くこともできてしまう。

これを避けるには、Aが《氷河跨ぎのワーム》を唱えることを宣言し、かつ、それを唱えている間にライブラリーの順番を入れ替えることが無いように気をつけるしかない。そうしなかった場合、ライブラリーの順番は無作為であるべきなので、《帰還した探検者、セルヴァラ》の能力を起動するよりも前に、ライブラリーを無作為化することも考えるべきだろう。

ひどくややこしいが、この状況はそもそもにレアケースである。

*裏向きのカードを捨てる

Aは《波止場の用心棒/Waterfront Bouncer》の能力を起動し、マナ能力を起動する際に《彩色の宝球/Chromatic Sphere》を使用した。その後、引いたカードを捨てた。そしてそれは《引き裂かれし永劫、エムラクール》だった。


呪文を唱えている間や、能力を起動している間に、他の呪文や能力がカードを引かせた場合、それはその呪文が唱え終わる、または能力が起動し終わるまで裏向きである。(CR401.5)
つまり、例の場合、引いたのは《引き裂かれし永劫、エムラクール》であるが、それは裏向きであり特性を持たない。それは墓地に置かれ、《波止場の用心棒》の起動が完了したあとに公開される。つまり、この場合、《引き裂かれし永劫、エムラクール》が墓地に置かれたときの能力は誘発しない。

*ランダムじゃない

Bは《抑制の場/Suppression Field》をコントロールしている。
Aは《ゴブリンの試験操縦士/Goblin Test Pilot》の能力を起動した。
A「対象をランダムに決めて……あ、俺になったわ。んじゃマナ能力を起動しないでおこう。{2}は支払わえないね。巻き戻していい?」


能力の起動はコストの支払いよりも対象を先に決めるので、このようなことができてしまう。

さて、「巻き戻し」が許される一般的な場合を考えてみよう。それはプレイヤーがうっかりマナの計算を間違ったり、カードを見誤ったりした場合だと考えられる。つまり、このような巻き戻しができるのは、「ゲームを続けさせるために機会が与えられた」と捉えるべきだろう。つまり、意図的に支払いを行わなくすることで、不利を被らない行為を、繰り返させるべきではない。



"And if you gaze for long into an abyss, the abyss gazes also into you."


コメント

nophoto
とおりすがり
2016年3月15日21:19

CRの歪みとはまたちょっと違うと思いますが

「勝利条件と敗北条件を同時に満たしたプレイヤーは、ゲームに敗北する。」

ってあったと思うのですけど、これの具体例って存在するんですかね?
最初は投了を絡めればいけるかなと思ってましたけど
投了は即座にゲームに敗北しちゃうので勝利条件を満たせないんですよね

testing
2016年3月16日11:22

CR104.3fについては、現在のところ、具体的な例は存在しません。

かつては、シングルエリミネーションのサドンデスにおいて、適用される事態が想定されていましたが、現在ではその点が修正されているので、具体的な例はありません。
とはいえ、積極的に削除する理由もないので、このままであると推測されます。

nophoto
アンティ
2016年3月16日21:18

手札が0の対戦相手に嵐のイフリートの能力を使用したら、所有権の交換は失敗するけど嵐のイフリートは対戦相手の墓地に置かれますか?

testing
2016年3月17日16:10

交換するべきものがないので、オーナーの交換もおこりません。
その後、対戦相手の墓地に置かれるように指示されますが、オーナーの墓地に行きます。(CR400.3)

nophoto
アンティ
2016年3月17日21:22

CR101.1によって対戦相手の墓地に置かれるのではないのですか?

testing
2016年3月17日23:07

いいえ。テキストとルールは矛盾していません。

オーナーが異なるカードが対戦相手の墓地に置かれることになるので、CR400.3によりオーナーの墓地におかれます。

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