Changing Morph Handling in the IPG
2014年12月14日 Ruling違反処置指針における変異の扱いについて
12日にL5であるToby Elliottから、競技RELについての変異に関する懲罰指針の変更が通知されました。
この変更は長文であり、有志が和訳を発表していますが、これに関して監修を施したものを掲載します。サマリー的なものは以下を参照して下さい。
*プレイヤー向け:
変異の取り扱いについて、ゲーム中に気をつけることは、今までと変わりありません。
戦場にある裏向きのカードが別の領域に行く際や、スタック上にある裏向きの呪文が戦場とは別の領域に置かれる場合、その表を全プレイヤーに公開し、(適正であることを)示して下さい。
また、ゲームの終了時には、裏向きのパーマネントと裏向きの呪文を公開してください。
公開するのを忘れてしまったら、ジャッジを呼びましょう。
*ジャッジ向け:
ゲームの終了時に、裏向きのカードの表を公開し忘れた場合、〔ゲーム上の誤り ─ その他一般のゲームルール抵触行為〕にあたります。
現状のIPGでは、格上げを行うように書かれていますが、格上げができるのはヘッドジャッジのみです。あなたがヘッドジャッジでない場合、ヘッドジャッジに確認すべきでしょう。(もちろん、今回の変更はこの点について述べています。ヘッドジャッジの手をわずらわせる事は少なくなるかもです)
今回の変更は即時に適応されます。12月13日現在、新しいIPG文書はリリースされていませんのでご注意。
なお、以降の文章は以下のサイトを参考にしました。zoeさんに感謝します。
http://zoe343.diarynote.jp/201412131007062197/
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原文:http://blogs.magicjudges.org/telliott/2014/12/12/changing-morph-handling-in-the-ipg/
Changing Morph Handling in the IPG
by Toby Elliott
*今回の変更の要点
現時点より、「変異の公開を忘れた」という違反への懲罰は【警告】となる。
変異を持たないカードを変異としてプレイし、それに概ねすぐ気づくことが出来なかった場合は引き続き【ゲームの敗北】となる。
より詳しい説明については以下を。
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皆さん、このルールは我々の予想以上に複雑でした。
この公開忘れの問題は我々にとって意外だったのです。我々の多くはオンスロート時代にジャッジをしていましたが、当時はさほど大きな問題にはなっていませんでした。「ゲーム終了後に【ゲームの敗北】が発生する」という不快な状況を、より合理的な形へと修正しなければなりません。
この問題が話題に上がるようになったのはいくつかの理由があります。まず、オンスロート時代はコモンにバウンス呪文が無かったこと。また、タルキール覇王譚の変異コストがより多くなっていること。そして、現在はソーシャルメディアという議論の場があることです。それぞれ単独では些細なことですが、それらの相互作用によるものだと考えています。また、さらなる注目点として、現在はプレイされるゲームの数が、当時よりはるかに多くなっているという点もあります。我々はこの種の違反は概ね0.2%程度で発生するものだと考えていました。100人規模のPTQ(オンスロート時代はこれでもイベントとしては上々でした)であれば、高々1件の【ゲームの敗北】が出る程度であり、特筆すべきものではありません。しかし、今現在で毎週のように行われている、2500人規模のグランプリでは30件以上起きるということであり、当然ながらより印象に残ることになります。
単純な損得勘定で考えても、変異を悪用して不正を働くというのはまったく合理的ではありません。2/2のクリーチャー単体のもたらす利益は小さく、一方で(クリーチャーが死ぬとか、どこか他の領域に移動するとかで)不正が発覚するリスクは高く、そしてひとたび発覚してしまえば、そのような怪しげな状況は取り調べの対象になるわけです。我々が不快になるレベルの【ゲームの敗北】が発給されていたことを考えると、ここを変える理由は十分にあるわけです。簡単に思えませんか?
実はそうではありません。「変異のルールを消すだけでは?」と思われるかもしれませんが、問題は変異の部分ではないのです。『ゲーム上の誤りで、対戦相手から見て明らかでないものは格上げする』という、根の深い理念上の問題なのです。プレイヤー自身がその状況に対して責任がある場合、その人はゲームの状態について注意深くあるべきだ、という点において合理的に見えます。そしてこのルールは他の状況にも適用されます。例えば、限定的なカードを引っ張ることができる教示者を、《Demonic Tutor》のような何でも引っ張れるものとして使わせてはいけません。変異について「警告でいいじゃない」という人の多くは、構造的には同じ問題である《商人の巻物》についてはそう言わないでしょう。
さて、我々はより技術的なことを書くことも可能です。そして、一方で「このルール(訳注:格上げ規定)は変異については適用されない」とだけ書き加えようと主張する人もいました。しかし、我々にとってIPGは「例外は最小限にし、可能な限り直感的に理解できる」べきであるのです。特定のメカニズムのために例外を書き加えることは、覚える上でも運用する上でも困難を増やすことに繋がりますし、理念の部分に触れないまま変異だけを例外扱いすることは極めて場当たり的に見えてしまうことでしょう。
我々は変異というメカニズムを詳しく掘り下げてみました。一体、教示者の問題と何が違うのでしょうか。結果、それは「ゲームの終了時に起きる」という興味深い差異にたどり着きました。では、【ゲームの敗北】の相殺という理念を広げて、ゲームに勝利した時に限り、その勝ちを相殺する形式で【ゲームの敗北】を出すのはどうでしょうか? これだと、ラウンド時間の問題や、バウンスの時の問題が残ります。それでは、非公開領域に移動する際の公開を忘れたときだけ格上げすると、どうなるでしょうか? 結局、いずれも問題があることがわかったので、結論として変異によっての格上げは全面的に見送られることになったのです。
最終的に行ったことは、「なぜこの変更が必要になるのか」ということからの見直しでした。懲罰というのものは「正しい行動」を奨励するために定められているものです。「意識的に変異の確認を誤魔化す」という違反においては、対戦相手が既に去っていることが大きな利点をもたらす、これこそ本質的な問題だったのです。PTQのプレイヤーが、ゲーム終了時にそうした不正を行おうと思わせないことこそが大事なのです。「適正さを確認するために必要な情報がどれであるか特定でき、違反が行われてからずっと区別できる場所にある場合は格上げしない」というルールがあります。この扱い自体は(その後適正であったことを公開させなければならないので)この問題に適用できませんが、一方である解決策への糸口になりました。
変異を公開しないままゲームを終了させて片付けるとき、ゲームの進行をコントロールしていたのは誰でしょうか? ゲームを終了させるのは敗者です。彼は、最初に「ありません」等の発言をして、ゲームを終了させるでしょう。似たことがバウンスの時にも言えます。対戦相手が「手札に戻す」という行動を始めた時、それは誰の目にも明らかな行動であって、バウンスさせたプレイヤーは状況をある程度コントロールできるため、ある程度の負担(訳注:恐らく戻そうとするタイミングで「それ何?」と聞くこと)を負うことが出来るはずです。こうして、我々はIPGの〔その他一般のゲームルール抵触行為〕の格上げに関する部分を次のように読み替えることにしたのです。
この変更は即日適用され、近いうちに更新されたIPGが発行されます。
単純な変更であっても、実のところ理念が色々と影響するために、作業が困難になるということを説明した結果、この長さとなってしまいました。我々は常に良くなる方法を考えていますが、それはどんな試みであっても理路整然とした一貫性のあるものでなければなりません。今回の変更が、競技イベントにおける不快感の緩和を期待する一方、変異という非公開情報を悪用する機会を減らすことを祈っています。
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12日にL5であるToby Elliottから、競技RELについての変異に関する懲罰指針の変更が通知されました。
この変更は長文であり、有志が和訳を発表していますが、これに関して監修を施したものを掲載します。サマリー的なものは以下を参照して下さい。
*プレイヤー向け:
変異の取り扱いについて、ゲーム中に気をつけることは、今までと変わりありません。
戦場にある裏向きのカードが別の領域に行く際や、スタック上にある裏向きの呪文が戦場とは別の領域に置かれる場合、その表を全プレイヤーに公開し、(適正であることを)示して下さい。
また、ゲームの終了時には、裏向きのパーマネントと裏向きの呪文を公開してください。
公開するのを忘れてしまったら、ジャッジを呼びましょう。
*ジャッジ向け:
ゲームの終了時に、裏向きのカードの表を公開し忘れた場合、〔ゲーム上の誤り ─ その他一般のゲームルール抵触行為〕にあたります。
現状のIPGでは、格上げを行うように書かれていますが、格上げができるのはヘッドジャッジのみです。あなたがヘッドジャッジでない場合、ヘッドジャッジに確認すべきでしょう。(もちろん、今回の変更はこの点について述べています。ヘッドジャッジの手をわずらわせる事は少なくなるかもです)
今回の変更は即時に適応されます。12月13日現在、新しいIPG文書はリリースされていませんのでご注意。
なお、以降の文章は以下のサイトを参考にしました。zoeさんに感謝します。
http://zoe343.diarynote.jp/201412131007062197/
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原文:http://blogs.magicjudges.org/telliott/2014/12/12/changing-morph-handling-in-the-ipg/
Changing Morph Handling in the IPG
by Toby Elliott
*今回の変更の要点
現時点より、「変異の公開を忘れた」という違反への懲罰は【警告】となる。
変異を持たないカードを変異としてプレイし、それに概ねすぐ気づくことが出来なかった場合は引き続き【ゲームの敗北】となる。
より詳しい説明については以下を。
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皆さん、このルールは我々の予想以上に複雑でした。
この公開忘れの問題は我々にとって意外だったのです。我々の多くはオンスロート時代にジャッジをしていましたが、当時はさほど大きな問題にはなっていませんでした。「ゲーム終了後に【ゲームの敗北】が発生する」という不快な状況を、より合理的な形へと修正しなければなりません。
この問題が話題に上がるようになったのはいくつかの理由があります。まず、オンスロート時代はコモンにバウンス呪文が無かったこと。また、タルキール覇王譚の変異コストがより多くなっていること。そして、現在はソーシャルメディアという議論の場があることです。それぞれ単独では些細なことですが、それらの相互作用によるものだと考えています。また、さらなる注目点として、現在はプレイされるゲームの数が、当時よりはるかに多くなっているという点もあります。我々はこの種の違反は概ね0.2%程度で発生するものだと考えていました。100人規模のPTQ(オンスロート時代はこれでもイベントとしては上々でした)であれば、高々1件の【ゲームの敗北】が出る程度であり、特筆すべきものではありません。しかし、今現在で毎週のように行われている、2500人規模のグランプリでは30件以上起きるということであり、当然ながらより印象に残ることになります。
単純な損得勘定で考えても、変異を悪用して不正を働くというのはまったく合理的ではありません。2/2のクリーチャー単体のもたらす利益は小さく、一方で(クリーチャーが死ぬとか、どこか他の領域に移動するとかで)不正が発覚するリスクは高く、そしてひとたび発覚してしまえば、そのような怪しげな状況は取り調べの対象になるわけです。我々が不快になるレベルの【ゲームの敗北】が発給されていたことを考えると、ここを変える理由は十分にあるわけです。簡単に思えませんか?
実はそうではありません。「変異のルールを消すだけでは?」と思われるかもしれませんが、問題は変異の部分ではないのです。『ゲーム上の誤りで、対戦相手から見て明らかでないものは格上げする』という、根の深い理念上の問題なのです。プレイヤー自身がその状況に対して責任がある場合、その人はゲームの状態について注意深くあるべきだ、という点において合理的に見えます。そしてこのルールは他の状況にも適用されます。例えば、限定的なカードを引っ張ることができる教示者を、《Demonic Tutor》のような何でも引っ張れるものとして使わせてはいけません。変異について「警告でいいじゃない」という人の多くは、構造的には同じ問題である《商人の巻物》についてはそう言わないでしょう。
さて、我々はより技術的なことを書くことも可能です。そして、一方で「このルール(訳注:格上げ規定)は変異については適用されない」とだけ書き加えようと主張する人もいました。しかし、我々にとってIPGは「例外は最小限にし、可能な限り直感的に理解できる」べきであるのです。特定のメカニズムのために例外を書き加えることは、覚える上でも運用する上でも困難を増やすことに繋がりますし、理念の部分に触れないまま変異だけを例外扱いすることは極めて場当たり的に見えてしまうことでしょう。
我々は変異というメカニズムを詳しく掘り下げてみました。一体、教示者の問題と何が違うのでしょうか。結果、それは「ゲームの終了時に起きる」という興味深い差異にたどり着きました。では、【ゲームの敗北】の相殺という理念を広げて、ゲームに勝利した時に限り、その勝ちを相殺する形式で【ゲームの敗北】を出すのはどうでしょうか? これだと、ラウンド時間の問題や、バウンスの時の問題が残ります。それでは、非公開領域に移動する際の公開を忘れたときだけ格上げすると、どうなるでしょうか? 結局、いずれも問題があることがわかったので、結論として変異によっての格上げは全面的に見送られることになったのです。
最終的に行ったことは、「なぜこの変更が必要になるのか」ということからの見直しでした。懲罰というのものは「正しい行動」を奨励するために定められているものです。「意識的に変異の確認を誤魔化す」という違反においては、対戦相手が既に去っていることが大きな利点をもたらす、これこそ本質的な問題だったのです。PTQのプレイヤーが、ゲーム終了時にそうした不正を行おうと思わせないことこそが大事なのです。「適正さを確認するために必要な情報がどれであるか特定でき、違反が行われてからずっと区別できる場所にある場合は格上げしない」というルールがあります。この扱い自体は(その後適正であったことを公開させなければならないので)この問題に適用できませんが、一方である解決策への糸口になりました。
変異を公開しないままゲームを終了させて片付けるとき、ゲームの進行をコントロールしていたのは誰でしょうか? ゲームを終了させるのは敗者です。彼は、最初に「ありません」等の発言をして、ゲームを終了させるでしょう。似たことがバウンスの時にも言えます。対戦相手が「手札に戻す」という行動を始めた時、それは誰の目にも明らかな行動であって、バウンスさせたプレイヤーは状況をある程度コントロールできるため、ある程度の負担(訳注:恐らく戻そうとするタイミングで「それ何?」と聞くこと)を負うことが出来るはずです。こうして、我々はIPGの〔その他一般のゲームルール抵触行為〕の格上げに関する部分を次のように読み替えることにしたのです。
対戦相手が適正かどうか確認できない類の誤りは、懲罰を格上げすべきである。その種の誤りには、選択が適正であったことを示すためのカードの公開忘れや、変異を持たないカードを変異としてプレイしたなどの非公開情報の誤用が含まれる。非公開情報に関して対戦相手がそれを指摘する機会があって、どれであるか特定できる場合(たとえばライブラリーの一番上であるとか、手札の唯一のカードであるとか、ゲーム終了時に戦場に残っていたなど)、この懲罰を格上げにせず、可能な限りその情報を公開すること。
この変更は即日適用され、近いうちに更新されたIPGが発行されます。
単純な変更であっても、実のところ理念が色々と影響するために、作業が困難になるということを説明した結果、この長さとなってしまいました。我々は常に良くなる方法を考えていますが、それはどんな試みであっても理路整然とした一貫性のあるものでなければなりません。今回の変更が、競技イベントにおける不快感の緩和を期待する一方、変異という非公開情報を悪用する機会を減らすことを祈っています。
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