Duplicant

2013年8月1日 Tips


*承前

時は旧ミラディンのころ。
《水銀の精霊/Quicksilver Elemental》というクリーチャーが出たことによって、ルールモンガー的には美味し……頭の痛い問題がいくつか出るようになった。

その最たるものとして、追放されたカードの扱いがあった。(当時は「取り除かれたカード」という表現でしたが、以後現在風の「追放する」と表現します)
よく引き合いに出されたのは、《弧炎撒き/Arc-Slogger》の能力をコピーして、まず10枚追放する。その後、クリーチャーになっている《教議会の聖域/Synod Sanctum》の能力をコピーし、さっき追放されたカードを戦場に出す、という動きだった。

果たしてこのコンボは可能なのか?

……結局、このコンボは不可能とされた。追放したカードを追跡するには、同じオブジェクト由来の能力でないといけない、という理由が付けられたのである。つまり、《教議会の聖域/Synod Sanctum》由来の能力でカードが戻ってくるには、その《教議会の聖域/Synod Sanctum》由来の能力で追放したものであることが必要で、他の能力(=《弧炎撒き/Arc-Slogger》由来の能力)で追放したカードは、戻ってこない、という裁定が下ったのである。


*刻印

長らく、《教議会の聖域/Synod Sanctum》のように「単に追放されたカード」と、《等時の王笏/Isochron Scepter》などの「刻印されたカード」の扱いは別物であった。そのオブジェクト由来で追放されたカードであっても、それは「刻印」されているかどうかを見ていたのである。


*《映し身人形/Duplicant》VS《死面の映し身人形/Death-Mask Duplicant》

さて、《映し身人形/Duplicant》に話をもっていこう。これと同時期のカードに《死面の映し身人形/Death-Mask Duplicant》というカードがある。この2枚はいずれも刻印しているカードを参照する。

さて、いくつかのコピー効果を適用すると、《死面の映し身人形/Death-Mask Duplicant》を利用して、「複数のクリーチャー・カードを刻印した状態の《映し身人形/Duplicant》」ができあがる。

この《映し身人形/Duplicant》は奇妙なことに、複数のP/Tの値を持つことになる。カードが複数のP/Tの値を持つことは、実はCR上で禁止されていないので、CR上の矛盾は起こらない。

例えば、2/3 と 4/1 のクリーチャーが刻印されているとしよう。この《映し身人形/Duplicant》が戦闘でダメージを与える場合、それはパワーの値……つまり2、4……のダメージを与える。従って6点のダメージを結果として与える。逆に、致死ダメージをチェックする場合、タフネスの値……つまり3、1……を見る。つまり、この《映し身人形/Duplicant》は1点のダメージを負うことでそれは致死ダメージを受けていると判断される。


*エラッタ

このため、複数個のオブジェクトが刻印されうることを考慮し、《映し身人形/Duplicant》のオラクル・テキストには "last" が加えられ、「『最後に』刻印されたクリーチャーカード」1枚のみを参照するようになった。これにより、複数のP/Tを持つことは避けられたのである。


*関連する能力

時が経ち、CRの整備が進んで、「関連する能力」が提唱された。

これは、前述の《弧炎撒き/Arc-Slogger》+《教議会の聖域/Synod Sanctum》の問題を解決する手がかりになるものである。つまり、ある能力が、同じオブジェクトに書かれている能力によって追放されたカードを参照する場合、2つの能力は「関連して」いて、関連している能力以外の能力によって追放されたカードは参照しない、とされたのだ。

これにより、能力によって追放されたカードは、他の関連付けられた能力のために使われるようになり、刻印という単語も能力語になって個別の意味が消失したのである。


*エラッタ(2回目)

「関連する能力」の整備により、《映し身人形/Duplicant》はたかだか一つのカードしか参照できなくなったので、"last" は不要とされ、ほぼ印刷された文章そのままになった。
(→Archenemy版、Commander’s Arsenal版の《映し身人形/Duplicant》)


*関連する能力のコピー

さて、M14で《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》が出現した。これにより、関連する能力であったとしても、複数の「追放されたオブジェクト」を参照することが可能になった。

ほとんどのカードで利用できるよう、CRには複数のオブジェクトを参照するための指針が設けられた。《精鋭秘儀術師/Elite Arcanist》と《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》の挙動は代表的な説明になっている。


*エラッタ(3回目)

不幸なことに、《映し身人形/Duplicant》は《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》によってまたしても「複数のP/Tを持つ」状態になってしまった。

そして、前回と同じようなエラッタ……"last/最後"……が付加されたのである。


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そんなところで。

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