*注意*
この記事の内容は筆者ことtestingがルール文書並びにForumや他ジャッジに伺った内容を
私的に判断して記事にしたものです。あくまで一つの考え方として受け止めてください。
実際に似通った状況であっても、下される裁定や罰則は異なることがあります。
全てはその大会のヘッドジャッジの判断に委ねられます。



次のような状況を考えてみよう。
なお、以下はRELを『競技』として考える。



Qのコントロールしているクリーチャーは《霜のタイタン/Frost Titan》のみである。

Pのターン、Pは《忘却の輪/Oblivion Ring》を唱えた。
Qは「対象は?」と聞いたので、PはQの《霜のタイタン》を指し、
《忘却の輪》を《霜のタイタン》のすぐそばに置いた。
Qはそれらに対してなにもしなかった。

その後、Pは「戦闘入ります」と言って、自分のクリーチャーで攻撃をした。

すると、Qは《霜のタイタン》でブロックを宣言しようとしたのだ。
Pはここでジャッジを呼んだ。

さあ、あなたが呼ばれたジャッジだとして、どう処理をするか?



・どこが間違っているか?

上記PとQの一連の行動での、一番大きな食い違いは

「《霜のタイタン》は、Pが戦闘を宣言した時点でどの領域にあるか?」である。

Pは《忘却の輪》で《霜のタイタン》を追放したと思っているはずで、
Qは《霜のタイタン》がまだ戦場にあると思っている。

この食い違いの原因は《霜のタイタン》の1番目の誘発型能力、

「霜のタイタンがいずれかの対戦相手がコントロールする呪文1つや能力1つの対象になるたび、
 それのコントローラーが{2}を支払わないかぎり、その呪文や能力を打ち消す。」

の誘発とその解決に関して、PとQが一切触れていないことである。

上記の行動をかえりみると、Pは{2}を支払う動きを一切していない。
つまりPは{2}を支払わなかったと判断され、《忘却の輪》の誘発型能力は打ち消された。
結局、《霜のタイタン》はまだ戦場にある。

つまり、PとQの一連の行動は矛盾が無く、ただ確認ができていないだけである。

あなたは両プレイヤーに懲罰を与えること無く、状況が明白に分かるようにプレイを進めるよう、
口頭で注意し、その場を離れる。



……これで良いのだろうか?


・誰が解決をする必要があるか?

《霜のタイタン》の1番目の誘発型能力(FT)を考えよう。
このオブジェクト(FT)のコントローラーはQである。
つまり、(FT)の解決はQが中心となって行わなくてはいけない。

(FT)の解決中、選択を行うところがあるが、その選択を行うのは(FT)のコントローラーではなく、
対戦相手のPである。つまり、Qは(FT)の解決中に、「{2}支払うかどうか?」という選択を
Pに促さないと、(FT)の解決を完了できない。言い換えると、Pが「{2}支払う」又は「支払わない」
という選択を行わないと、Qが(FT)の解決を完了することはできないのである。


・となると、何が原因か?

Qは(FT)の解決を忘れていたのだろうか? 
それとも、(FT)が誘発したことは承知の上で、Pが何もしないことに期待したのだろうか? 

場合分けをしてみよう。

 
パターン1)

Qが《霜のタイタン》の誘発そのものを忘れていたのならば、《忘却の輪》の誘発型能力は
そのまま解決されているはずで、《霜のタイタン》は戦場に無く、追放されていなくてはいけない。

上記の状況では、《霜のタイタン》は物理的に動かされていない。ただ《忘却の輪》がその
そばに置かれただけである。

この場合の懲罰は以下のようになる。

・Qは《霜のタイタン》の誘発型能力の誘発を忘れていた→〔ゲーム上の誤り ― 誘発忘れ〕【警告】
・Qは《霜のタイタン》の領域を移動させていなかった→〔ゲーム上の誤り ― その他一般〕【警告】、
 かつ、Pにも同様に〔ゲーム上の誤り ― その他一般〕【警告】


#Pはこの場合、〔ゲーム上の誤り ― 違反の見逃し〕にはならない。
#Qが犯した〔ゲーム上の誤り〕を起こした効果は、全てPによってコントロールされている状況であり、
#不正な行動そのものはPでなくQによってなされている。
#この場合、IPG3項の前文に従い、両方のプレイヤーが〔ゲーム上の誤り ― 違反の見逃し〕では
#なく、本来の違反による懲罰、〔ゲーム上の誤り ― その他一般〕を受ける。


しかし、このパターン1)は非常に考えづらい。

現実問題として誘発型能力(FT)を忘れ、そして《忘却の輪》による領域移動も忘れ、
《霜のタイタン》がまだ戦場にあると思っていたという主張は、やや強引であると言わざるをえない。

 
パターン2)

Qが《霜のタイタン》の誘発を認識していたのならば、《霜のタイタン》の誘発型能力の解決中に、
QはPに{2}を支払うかどうかの選択をさせない限り、この誘発型能力の解決は終了しない。
従ってスタックにある《忘却の輪》の誘発型能力は解決できない。

上記の状況では、Qは《霜のタイタン》の能力の解決中に、Pへ選択を促していない。
Qは自分に有利な状況を作ろうとして『意図的に』正常な手続きを行っていない、と考えられる。
つまり、この場合Qは〔イカサマ ― 詐欺行為〕となり、懲罰は【失格】となる。


・冒頭の状況での結論

《霜のタイタン》の能力の解決中に、QはPへ選択を促さなければならないのに
意図的にだまったままゲームを続行し、《霜のタイタン》が《忘却の輪》により追放されずに
戦場にあるという、Qに有利な状況を作成した。

よってQは〔イカサマ ― 詐欺行為〕となり、【失格】となる。


・ジャッジはどうすべきか?

上記の状況で呼ばれた場合、ジャッジはPとQにインタビューを行うべきである。
どこまでを認識していたのか? 互いの言葉、もしくは本人の言動に矛盾はないか?
確認する事項は少ししかないはずである。

結果としてプレイヤーがウソをついていたと判明した場合、容赦する必要はない。……残念ながら。

 
・良きプレイヤーであれ

最初に挙げた状況は例としては極端かもしれない。

が、プレイヤーはゲームの状況を正確に理解し、最善のプレイングを行うべきである。

ルールを逆手に取って無闇にプレッシャーをかけるのは、プレイングではない。
対戦相手のボーンヘッドを期待するのは良いプレイヤーの姿勢からは程遠い。

プレイヤーは良きプレイングをする「プレイ」ヤーであれ。そう願ってやまない。

コメント

nophoto
質問です
2010年9月1日22:10

>このオブジェクト(FT)のコントローラーはQである。
>つまり、(FT)の解決はQが中心となって行わなくてはいけない。

ここについて、何か明文化された資料はあるのでしょうか?

testing
2010年9月1日22:32

あまりにアタリマエのことなのでそのズバリを書いている箇所はありませんが、

608.2c 呪文や能力のコントローラーは、書かれた順序で指示に従う。

とある通り、解決に入っているのならばそのコントローラーが指示に従う必要があります。

雷神
2010年9月1日22:40

たとえばAがカードのテキストを読み間違って(勘違いして)カードを使っていて、それがB(Aの対戦相手)にとっては勘違いしている方が有利な状態だったので間違っていると分かっていながら相手に言わず進行した場合にもこういった裁定(イカサマ-詐欺行為)に該当しますか?

testing
2010年9月1日23:11

IPG6.2 〔イカサマ-詐欺行為〕の例Eがまさにそれです。

(E) 対戦相手あるいはチームメイトが不正なプレイをしたのに気付いたプレイヤーが、自分の利益になると判断してジャッジを呼ばなかった。

雷神
2010年9月1日23:27

回答ありがとうございました。

カズ
2010年9月1日23:55

質問です

最終的にこの問題が詐欺行為にあたるとして

1)Pの「戦闘入ります」の部分は、「誘発(型能力)を解決させて戦闘に入ります」だと詐欺行為にあたりますか?
2)上記が詐欺行為に当たる場合、「誘発(型能力)をすべて解決させて戦闘に入ります」だと詐欺行為にあたりますか?

よろしくお願いします。

風華
2010年9月2日6:41

ルーリングについての記事、いつも楽しみに参考にさせていただいております。
リンクさせていただきました。ジャッジの端くれとして頑張ります。よろしくお願いします。

testing
2010年9月2日21:17

> カズさん

なんとも言えません。

Pが普段からそのような言い方で行動の省略を行っているのなら、
記事の内容に帰着できるでしょう。が、そのような言い方がよく使われているとは
個人的にはとても思えません。

なので、Pがそのように言うのであれば、Qはなにかしらのリアクションを行うのが
普通でしょう。例えば「何を?」「どれを?」など。

なので私的にはその仮定では、両者にインタビューをしない限り
なんとも言えません。

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