Linked Abilities
2008年7月24日コメント (6)7月付けでCRが更新され、色々な箇所が変更または改訂されています。
その中でも、特に大きいと思われるのが CR407項の"Linked Abilities" です。
今日はそんなCRのお話。
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1) ミラディン世界での出来事
ミラディンの頃、とあるカードの挙動がルール上で問題となった。
《水銀の精霊/Quicksilver Elemental》が、《弧炎撒き/Arc-Slogger》の能力をコピーし、
その能力によって10枚のカードがライブラリーから取り除かれた。
その後、同じ《水銀の精霊》が《機械の行進/March of the Machines》によって
クリーチャー化した《教議会の聖域/Synod Sanctum》の能力をコピーし、
その2番目の能力によって「取り除かれたカード」を全て場に戻そうとした。
さて、取り除かれた10枚のカードは場に戻ってくるのだろうか?
もちろん、(カードの挙動的に言っても)戻ってくることはない。
しかしルール上の根拠が無いことから、「取り除かれたカード」という扱いが
決められ、(5/1付け)CR217.7d という項目になった。
つまり取り除かれたカードは、それが取り除かれた能力を覚えていて、
その能力と関連する能力によって適当に効果を受けるようになった。
このような「カードを取り除く能力」と、「それによって取り除かれたカードを参照する能力」
は、ミラディン以降一つにまとめて考えられるようになった。
それでは現在へ戻ろう。
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2) 《島/Island》を禁止できない?
この前のFMQで出題した「《島/Island》のプレイを禁止する方法」で、
以下のような組み合わせを回答に載せた。
i) 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》、《機械の行進/March of the Machines》を出す。
ii) 《真髄の針/Pithing Needle》をプレイし、「《島/Island》」と宣言する。
iii) 《翻弄する魔道士》に《鏡編み/Mirrorweave》をプレイする。
iv) 《翻弄する魔道士》のコピーとなった《真髄の針》で宣言されたカードは
《島/Island》なので、《島/Island》のプレイは禁止される。
しかし、今回のCR改訂によって、このようなことはできなくなった。
《翻弄する魔道士》の能力は以下の2つである。
A)「《翻弄する魔道士》が場に出る際に、土地でないカードを1つ指定する。」
B)「指定されたカードはプレイできない。」
Bの能力はAの能力によって指定されたカード名を参照している。
このように、同一のオブジェクトに書かれている能力で、一方が他方の能力を
直接参照している場合、それらの能力は リンクしている(linked)と言う。
上記のような一方が他方を参照している能力群は数多く存在するが、
残念なことに、まとめて考えられるのは「ゲームから取り除く」ことに関するものだけだった。
しかし、これからは「〜〜を選ぶ。」「選ばれた〜〜は**である。」等といった
リンクしている能力群全体をまとめて考えることが出来る。
それが今回の CR407 "Linked Abilities" である。
そして、リンクしていない能力は、似通った能力であったとしても、
具体的な値やオブジェクトを参照できないようになった。
上の《翻弄する魔道士》と《真髄の針》の例で説明しよう。
《真髄の針》が《翻弄する魔道士》のコピーになった場合、このコピー《翻弄する魔道士》
がもつ能力は以下の通りである。
A)「《翻弄する魔道士》が場に出る際に、土地でないカードを1つ指定する。」
B)「指定されたカードはプレイできない。」
このオブジェクトは《翻弄する魔道士/Meddling Mage》として場に出ていないので、
A)によって指定されたカード名は無い。
なので、それとリンクしているB)によってプレイできなくなるカードは存在しない。
・・・となる。
もう《島/Island》をこの方法で禁止する事はできないのだ。
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3) 具体的な "Linked Abilities"
それでは、具体的なカードを挙げて、どのような能力がリンクしているか見てみよう。
CR407.2以降に例が載せられているので、その順番に説明をする。
なお、全て Bの能力はAの能力を参照しており、AとBはリンクしている。
(CR407.2a)
A「起動型能力や誘発型能力によって、カードをゲームから取り除く」
B「取り除かれたカードをあれやこれやする」
例)《詩神の器/Muse Vessel》、《顔なしの解体者/Faceless Butcher》 など。
(CR407.2b)
A「印刷されている置換効果によって、カードをゲームから取り除く」
B「取り除かれたカードをあれやこれやする」
例)《Frankenstein’s Monster》、《縫合グール/Sutured Ghoul》など。
(CR407.2c)
A「起動型能力や誘発型能力によって、オブジェクトを場に出す」
B「(このオブジェクトによって)場に出されたオブジェクトをあれやこれやする」
例)(ちょっと思いつきませんでした。良い例を思いついた方はコメント欄まで)
《はじける子嚢/Saproling Burst》など。
(CR407.2d)
A「プレイヤーに『[性質]を選ぶ』または『カード名を宣言する』ことをさせる」
B「選ばれた[性質]やカードはあれやこれやである」
例)《物語の円/Story Circle》、《翻弄する魔道士/Meddling Mage》など。
(CR407.2e)
同じパラグラフに書かれている、
A「常在型能力」とB「誘発型能力」
例)(これも良い例が思いつきませんでした。良い例を思いついた方はコメント欄まで)
《二度目の収穫/Rowen》など。
(CR407.2f)
A「キッカー {hogehoge}」
B「キッカー・コストが支払われていた/いない場合、あれやこれや」
例)《ウルザの激怒/Urza’s Rage》、《スキジック/Skizzik》など。
これにより、《スキジック》に《鏡編み》をプレイすると楽しいことになる。
(CR407.2g)
A「覇権/Champion の1番目の誘発型能力」
B「覇権/Champion の2番目の誘発型能力」
つまり、覇権能力は2つの能力がリンクしている "Linked Abilities" である。
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4) "Linked Abilities" とコピーの憂鬱
以下のような例を挙げる。コピー効果とLinked Abilities の相互作用をみて欲しい。
《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》が、表向きに場に出、
《万物の声/Voice of All》のコピーとなった。
場に出る際に『赤』を指定した。
このコピー《万物の声》は、プロテクション(赤)を持つ。
さて、このコピー《万物の声》が、アップキープステップに裏向きになった。
その後、変異コストを支払って表向きになり、《クウィリーオン・エルフ/Quirion Elves》のコピーとなった。
このコピー《クウィリーオン・エルフ》のマナ能力で{R}を出せるだろうか?
・・・答えは「出せない」である。
《クウィリーオン・エルフ》のマナ能力と、1番目の「場に出る際〜」の能力とは
リンクしている。つまり、このオブジェクトは《クウィリーオン・エルフ》として
場に出ていないので、1番目の能力で選ばれた色は無い。
このコピー《クウィリーオン・エルフ》が、また裏向けになり、
今度は《万物の声/Voice of All》のコピーに戻った場合、
それは再びプロテクション(赤)を持つ。
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そんなところで。
その中でも、特に大きいと思われるのが CR407項の"Linked Abilities" です。
今日はそんなCRのお話。
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1) ミラディン世界での出来事
ミラディンの頃、とあるカードの挙動がルール上で問題となった。
《水銀の精霊/Quicksilver Elemental》が、《弧炎撒き/Arc-Slogger》の能力をコピーし、
その能力によって10枚のカードがライブラリーから取り除かれた。
その後、同じ《水銀の精霊》が《機械の行進/March of the Machines》によって
クリーチャー化した《教議会の聖域/Synod Sanctum》の能力をコピーし、
その2番目の能力によって「取り除かれたカード」を全て場に戻そうとした。
さて、取り除かれた10枚のカードは場に戻ってくるのだろうか?
もちろん、(カードの挙動的に言っても)戻ってくることはない。
しかしルール上の根拠が無いことから、「取り除かれたカード」という扱いが
決められ、(5/1付け)CR217.7d という項目になった。
217.7d
カードを取り除く能力と、「取り除かれたカード」あるいは「[カード名]によってゲーム
から取り除かれたカード」を用いる能力とを持つカードが存在する。これらの能力は関連
しているものであり、この2つめの種類の能力は、その1つめの種類の能力の結果取り除か
れたカードで、ゲーム外領域に置かれているものだけを用いる。他のオブジェクトがその
両方の能力を得た場合、そのオブジェクトにおいて同様に関連づけられる。そのオブジェ
クトが類似の能力を持っていたとしても、それらと関連づけられることはない。
つまり取り除かれたカードは、それが取り除かれた能力を覚えていて、
その能力と関連する能力によって適当に効果を受けるようになった。
このような「カードを取り除く能力」と、「それによって取り除かれたカードを参照する能力」
は、ミラディン以降一つにまとめて考えられるようになった。
それでは現在へ戻ろう。
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2) 《島/Island》を禁止できない?
この前のFMQで出題した「《島/Island》のプレイを禁止する方法」で、
以下のような組み合わせを回答に載せた。
i) 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》、《機械の行進/March of the Machines》を出す。
ii) 《真髄の針/Pithing Needle》をプレイし、「《島/Island》」と宣言する。
iii) 《翻弄する魔道士》に《鏡編み/Mirrorweave》をプレイする。
iv) 《翻弄する魔道士》のコピーとなった《真髄の針》で宣言されたカードは
《島/Island》なので、《島/Island》のプレイは禁止される。
しかし、今回のCR改訂によって、このようなことはできなくなった。
《翻弄する魔道士》の能力は以下の2つである。
A)「《翻弄する魔道士》が場に出る際に、土地でないカードを1つ指定する。」
B)「指定されたカードはプレイできない。」
Bの能力はAの能力によって指定されたカード名を参照している。
このように、同一のオブジェクトに書かれている能力で、一方が他方の能力を
直接参照している場合、それらの能力は リンクしている(linked)と言う。
上記のような一方が他方を参照している能力群は数多く存在するが、
残念なことに、まとめて考えられるのは「ゲームから取り除く」ことに関するものだけだった。
しかし、これからは「〜〜を選ぶ。」「選ばれた〜〜は**である。」等といった
リンクしている能力群全体をまとめて考えることが出来る。
それが今回の CR407 "Linked Abilities" である。
そして、リンクしていない能力は、似通った能力であったとしても、
具体的な値やオブジェクトを参照できないようになった。
上の《翻弄する魔道士》と《真髄の針》の例で説明しよう。
《真髄の針》が《翻弄する魔道士》のコピーになった場合、このコピー《翻弄する魔道士》
がもつ能力は以下の通りである。
A)「《翻弄する魔道士》が場に出る際に、土地でないカードを1つ指定する。」
B)「指定されたカードはプレイできない。」
このオブジェクトは《翻弄する魔道士/Meddling Mage》として場に出ていないので、
A)によって指定されたカード名は無い。
なので、それとリンクしているB)によってプレイできなくなるカードは存在しない。
・・・となる。
もう《島/Island》をこの方法で禁止する事はできないのだ。
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3) 具体的な "Linked Abilities"
それでは、具体的なカードを挙げて、どのような能力がリンクしているか見てみよう。
CR407.2以降に例が載せられているので、その順番に説明をする。
なお、全て Bの能力はAの能力を参照しており、AとBはリンクしている。
(CR407.2a)
A「起動型能力や誘発型能力によって、カードをゲームから取り除く」
B「取り除かれたカードをあれやこれやする」
例)《詩神の器/Muse Vessel》、《顔なしの解体者/Faceless Butcher》 など。
(CR407.2b)
A「印刷されている置換効果によって、カードをゲームから取り除く」
B「取り除かれたカードをあれやこれやする」
例)
(CR407.2c)
A「起動型能力や誘発型能力によって、オブジェクトを場に出す」
B「(このオブジェクトによって)場に出されたオブジェクトをあれやこれやする」
例)
《はじける子嚢/Saproling Burst》など。
(CR407.2d)
A「プレイヤーに『[性質]を選ぶ』または『カード名を宣言する』ことをさせる」
B「選ばれた[性質]やカードはあれやこれやである」
例)《物語の円/Story Circle》、《翻弄する魔道士/Meddling Mage》など。
(CR407.2e)
同じパラグラフに書かれている、
A「常在型能力」とB「誘発型能力」
例)
《二度目の収穫/Rowen》など。
(CR407.2f)
A「キッカー {hogehoge}」
B「キッカー・コストが支払われていた/いない場合、あれやこれや」
例)《ウルザの激怒/Urza’s Rage》、《スキジック/Skizzik》など。
これにより、《スキジック》に《鏡編み》をプレイすると楽しいことになる。
(CR407.2g)
A「覇権/Champion の1番目の誘発型能力」
B「覇権/Champion の2番目の誘発型能力」
つまり、覇権能力は2つの能力がリンクしている "Linked Abilities" である。
-------------------------------
4) "Linked Abilities" とコピーの憂鬱
以下のような例を挙げる。コピー効果とLinked Abilities の相互作用をみて欲しい。
《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》が、表向きに場に出、
《万物の声/Voice of All》のコピーとなった。
場に出る際に『赤』を指定した。
このコピー《万物の声》は、プロテクション(赤)を持つ。
さて、このコピー《万物の声》が、アップキープステップに裏向きになった。
その後、変異コストを支払って表向きになり、《クウィリーオン・エルフ/Quirion Elves》のコピーとなった。
このコピー《クウィリーオン・エルフ》のマナ能力で{R}を出せるだろうか?
・・・答えは「出せない」である。
《クウィリーオン・エルフ》のマナ能力と、1番目の「場に出る際〜」の能力とは
リンクしている。つまり、このオブジェクトは《クウィリーオン・エルフ》として
場に出ていないので、1番目の能力で選ばれた色は無い。
このコピー《クウィリーオン・エルフ》が、また裏向けになり、
今度は《万物の声/Voice of All》のコピーに戻った場合、
それは再びプロテクション(赤)を持つ。
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そんなところで。
コメント
A:誘発型能力で場に出し
B:出てきたのにネクロマンシーをつける
eはちょっと自身ないですけどキーワード能力の消散とか常在+誘発だった気が
>(このオブジェクトによって)場に出されたオブジェクトをあれやこれやする
前半括弧内の「このオブジェクト」とは元の能力をもつオブジェクトのことでしょうか。
それならば二重の造物/Dual Natureやはじける子嚢/Saproling Burstがこれに当てはまるのでは。
>このコピー《クウィリーオン・エルフ》が、また裏向けになり、
>今度は《万物の声/Voice of All》のコピーに戻った場合、
>それは再びプロテクション(赤)を持つ。
再度コピーになった場合、元の能力とは別の能力として扱われてLinked Abilitiesにはならず、プロテクション(赤)は持たないということにはならないのでしょうか。
関連した能力の例としては不適当ではないでしょうか。
> cは《ネクロマンシー/Necromancy》
「場に出て、クリーチャーを場に出して、つける」までが1つの能力なので
これはLinkされている2つの能力ではないです。
> eはちょっと自身ないですけどキーワード能力の消散とか常在+誘発だった気が
たしかに常在+誘発なんですけど、これってLinkしていなくても別に良いような・・・
> okay さん
> それならば二重の造物/Dual Natureやはじける子嚢/Saproling Burstがこれに当てはまるのでは。
これは適当な例だと感じました。
> 〜〜プロテクション(赤)は持たないということにはならないのでしょうか。
いいえ。《万物の声/Voice of All》の2番目の能力は1番目とリンクしており、
1番目の能力によって色は選ばれています。オブジェクト自身が領域を移動しておらず、
いわゆる「記憶」は残っていることに注意して下さい。
> CR407.2eの例はCR404.5にありました。《二度目の収穫》などが該当するようです。
なるほど。CR内に書かれている例ならば確実ですね。
どっちにせよカードとしてはあまり多くなさそうですが・・・
> ロード太郎 さん
> 動く死体や、Frankenstein’s Monsterは、取り除く効果と取り除かれたカードを参照
> する効果が同じ能力からのものなので、不適当ではないでしょうか。
いや全くその通りで。なおしておきます。
> eだとあとは共謀とかかな?
キーワード能力は、同一パラグラフとして見てはいけないと思うのですよ。
あくまで、2つの能力を併せて単語化したものなので。