PG51: Shortcuts.
2008年6月26日コメント (2)PG話の第3回目。
今回のお題はPG51にある、「手順の省略/Shortcuts」について。
ひとまずPGに関する話はこれで一区切りとしますが、
何かリクエストがあれば、また書くかもしれません。神戸もあるしね。
毒消しは以前と一緒。
この記事は、私ことtestingがサイトやforumからの内容をまとめ、自分なりに解釈したものです。
実際のゲームにおいては、ヘッドジャッジまたは主催者の指示に従い、適切に大会を進行する
ようにお願いいたします。なお、本記事の内容は2008/06改訂のPGに従っており、これ以降の
更新によって、記事内に例示された内容でも解釈や罰則が変わる可能性があります。
---------------------------------------
1)手順の省略とはどのようなものか?
M:TGには優先権というものがある。この優先権がやり取りされることでゲームは進む。
優先権が無いと、プレイヤーは呪文や能力のプレイができない。
なので、自分に優先権があるかどうかを、常に把握しておかないといけない。
とはいえ、優先権のやり取りをいちいち全部確認していては、ゲームが進まない。
===============================================
A「カードをアンタップして、アップキープ・ステップに入ります。
何もせず優先権を放棄します。」
B「俺も何もしない。そのままパスする。」
A「じゃあ、ドローステップに入ります。まずカードを引きます。
そして、何もせず優先権を放棄します。」
B「俺も何もしない。そのままパスする。」
A「では、第1メイン・フェイズに・・・」
・
・
===============================================
こんなやり取りをしていたら、1ゲーム終わる前に日が暮れてしまうだろう。
大多数のプレイヤーは、上のやり取りを省略して、「アンタップ、アップキープ、ドロー」
といった意思表示を行う。これが手順の省略である。
手順の省略とは、ゲームを円滑に進めるために、プレイヤーの行動の一部を略することである。
大抵の場合、省略される行動は上記の例でもあるとおり、優先権の放棄(パス)である。
もちろん、優先権の放棄を含んだ、一連の行動をまとめて省略することも手順の省略にあたる。
(例:《目覚ましヒバリ/Reveillark》+《影武者/Body Double》を利用したループ)
が、このような場合はどこからどこまでを省略するのかを明確に示す必要があり、
プレイヤーは最終的なゲームの状態がどのようになるのかを明らかにしなくてはいけない。
---------------------------------------
2)省略された行動への介入と、巻き戻し
プレイヤーは、手順を省略された行動に対して、どこの手順においてどのように介入するかを
宣言し、省略を中断させることができる。
手順の省略によってトラブルが起こった場合、その省略された行動の一番最初まで巻き戻る。
これにより懲罰が与えられることはない。が、より注意してゲームを続ける必要がある。
宣言をしていない省略や、自分勝手に改変した省略を用いて、ゲームを曖昧にしてはいけない。
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「《灰色熊/Grizzly Bears》と、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》で攻撃。」
B「・・・どうぞ。」
A「じゃ、ブロッカーは無しだね。《灰色熊》に《巨大化》で、計6点。」
B「いやちょっとまて。《ベナリアの騎士/Benalish Knight》を瞬速でプレイして
ブロックしたいんだが。」
A「え、でも『どうぞ』って言ったよね。」
B「それは攻撃クリーチャーの選択に関して言っただけで・・・」
A「ジャッジー!!」
===============================================
この場合、AとBの手順の省略にズレがある。
Aは「Bの『どうぞ』は、ブロッククリーチャー選択ステップにBが何もせず優先権を放棄した」
Bは「攻撃クリーチャー選択ステップに、何もせず優先権を放棄して次のステップに行こうとした」
上で書いたように、省略された一番最初の行動まで巻き戻るので、ジャッジは以下のようにする。
===============================================
J「では、省略された行動を巻き戻します。
今は攻撃クリーチャー選択ステップで、Aが攻撃クリーチャーを選択した後です。
優先権をAが持っている状態から始めてください。」
A(あいつ、《ベナリアの騎士》持ってるんだよなあ・・・)
B(あんの野郎、《巨大化》あるんだよなあ・・・)
===============================================
なお、これによりジャッジは双方に罰則を与えることはない。
言葉や伝え方が不十分で、今がどちらのどのフェイズ・ステップなのかが、わからなくなる
ことは頻繁にある。このような場合、省略された行動はすべて巻き戻る。
---------------------------------------
3)優先権の要求
プレイヤーは、省略された行動のうち、好きなところで介入を試みることができる。
が、優先権を要求した場合、そのまま何もせずに優先権をパスすることは認められない。
何もしない場合、優先権は要求されなかったものとして、直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。
古典的な言葉のトリックだが、以下の例を見てみよう。
===============================================
A「戦闘終わって、第2メインフェイズへ移ります。」
B「ん、《時間の把握/Telling Time》撃ちたいんだけどいいか?」
A「? どうぞ。」
B「じゃ、俺に優先権が移ったよな。で、俺は何もしないよ。パスする。
これでお互いが連続してパスをしたから、第2メインフェイズは終了だ。」
A「ち ょ っ と ま て」
===============================================
現在、このような事はできなくなった。
Bは優先権を要求したのだから、何かしらの行動をしなくてはいけない。
何もせずパスをした場合、Aに優先権が戻る。(そして今は第2メインフェイズである)
---------------------------------------
4)伝統的な手順の省略
以下に示す手順の省略は、ゲーム内で頻繁に行われるものである。
これらに関しては「どのような手順を省略したか」が定義されている。
そのつもりで省略を行ったのではない場合、どのような省略を行いたいのかを
プレイヤーは明確に示さなくてはいけない。
#ここから先はPG51に示されている例の引用をしていくことになります。
「これ以上は私から何もしません。私のターンを終了したいです。」という意思表示である。
対戦相手は、望むならばどの時点で割り込んでもよい。
例えば、「ターン終了時に」誘発する能力を誘発させたいために、
第2メインフェイズに優先権がある状態で、呪文や能力をプレイすることができる。
上の場合、戦闘フェイズに入ってから優先権を放棄するまでの行動が省略されている。
重要なのは、「戦闘したいです」と言ったプレイヤーは、戦闘開始ステップまで進んでもよい、
と宣言しているとみなされることである。
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「攻撃してもいいですか?」
B「えーと、じゃあ、《首吊り罠/Trip Noose》で、あなたの《アッシェンムーアの抉り出し
/Ashenmoor Gouger》をタップ。」
A「おーけー。じゃあ、まだ僕のメインフェイズだから、《復讐の亜神/Demigod of Revenge》
をプレイして、それで殴るよ。」
B「?!」
A「だって、メインフェイズの優先権を放棄しただけだよ。」
===============================================
Aは「攻撃してもいいですか?」という発言によって、省略を行っている。
これは言い換えると、「戦闘開始ステップに移って、優先権をBに渡すまでパスをします」
という意味になる。つまり上のような事はできない。
ルールを良く知っている人ほど、この項目については違和感を覚えるだろう。CRにはこうある。
呪文や能力をプレイしたり、あるいは特別な行動を取ったりした場合、
そのプレイヤーが再び優先権を得る。(CR418.1c)
ところが上の項目は、このCRの文章と矛盾しているように見える。
オブジェクトをスタックに積んだ場合、そのプレイヤーは優先権を再び得るはずなのに、
優先権の保持を宣言しないと、「優先権を放棄した」とみなされてしまうのだ。
これはなぜか?
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「《灰色熊/Grizzly Bears》で攻撃。」
B「はいよ。ブロックはしない。」
A「《巨大化/Giant Growth》をプレイします。」
このとき、Aの手札には《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》があった。
Aがこれもプレイしようかしばらく迷い、Bの顔を見てからこう言った。
A「《岩石樹の祈り》を《灰色熊》にプレイ。」
B「ちょっとまった。優先権の保持を言って無いな。割り込ませてくれ。
《突然のショック/Sudden Shock》を《灰色熊》に。」
A「え?! でも優先権をパスした覚えは無いよ。」
B「普段は、スタックに1個呪文を置いたら、すぐ解決に行こうとするだろ。
でもしばらく迷ってた。自分でプレイする意志が無くて、相手の反応を待っている
ってことは、優先権なんか要らないんじゃないか?」
===============================================
このBのプレイは適正である。(!)
優先権が自動的に保持されるという省略を行ったとしよう。そうすると、
上の例のAのように、優先権のある側は相手の反応を見ることができてしまう。
Bの顔色や手の動き、マナを数える仕草などを、優先権のある側が観察を行えるようになる。
そしてその反応が優先権の保持/パスという選択に反映されることは許されない。
もはやそれは「行動の省略」にあたらない。
プレイヤーは現在の優先権がどちらにあるかをはっきりと提示する必要がある。
・・・特に、複数のオブジェクトをスタックに乗せる場面が考えられるときは。
攻撃クリーチャーがいない場合、ブロッククリーチャー選択ステップと、戦闘ダメージステップ
は飛ばされる。この省略に関して、相手は飛ばされたステップに何かをすることはできない。
以下の例を考えてみよう。
===============================================
B「土地を16個タップして、《猛火/Blaze》。これで勝ちだろ。」
A「じゃ、《ルーンのほつれ/Rune Snag》。2マナ払ってね。」
B「実はX=13なんだ。2マナ支払うよ。どっちにせよAのライフは10点だから、勝ちだろ。」
A「な 、 な ん だ っ て ー !」
===============================================
Bは《猛火/Blaze》のXの値を宣言していない(省略している)ので、
マナ・プールにあるマナは全て使っているとみなされる。
この場合はX=15にしたとなる。3行目のBの言い分は認められない。
以下の例を考えてみよう。
===============================================
A「《迫害/Persecute》をプレイして、色は青ね。」
B「色は解決時に選ぶものだろ。まあ、何もしないけど。」
A「そっか、じゃあ、Bは打ち消し呪文無いんだ。やっぱ青じゃなくて黒で。」
B「?!」
A「だって、解決時に色を選ぶんでしょ。」
===============================================
このようなAの選択はできない。Aは先に選択をしてしまい、Bはそれに対応しなかったので
Aは先に宣言した選択(=青)をしなくてはいけない。
もう一つ見てみよう。
===============================================
A「《迫害/Persecute》をプレイします。」
B「・・・色は?」
A「黒で。」
B「んじゃ《取り消し/Cancel》。」
===============================================
このようなBの行動は認められない。Bは選択を促しているので、
「優先権を放棄して、解決に入ってもよい」という省略を行っているとみなされる。
文字通りなので解説はしない。《厚皮のゴブリン/Thick-Skinned Goblin》の能力と
エコーの誘発忘れについての問題があるぐらいだろう。
例えば、クリーチャー化した《樹上の村/Treetop Village》を、《灰色熊/Grizzly Bears》
でブロックされて、戦闘ダメージを割り振る際に、特に何も言わなかった場合、
割り振りは《灰色熊》に2点、プレイヤーに1点、となる。
注意深くプレイしているならば、戦闘ダメージの割り振りには特に慎重になるだろうから、
あまり気にすることではないように感じる。
打ち消し呪文の打ち合いになった時によく出会うだろう。
途中で《差し戻し/Remand》や《誤った指図/Misdirection》がある場合は
きっちり対象を宣言する/してもらうほうが良い。
攻撃は普通はプレイヤーに対して行われるので、プレインズウォーカーに攻撃する場合は
きちんと宣言をしないといけない。省略した場合はプレイヤーへの攻撃とみなされる。
例えば、一方のチームメイトが《ダメージ反転/Reverse Damage》を持っていた場合は、
相手チームの戦闘ダメージがどっちの頭(=プレイヤー)に与えられるかを確認しないと
何点のダメージを軽減できるかわからない。
なお、上の場合は《ダメージ反転》を持っているプレイヤーのチームが、確認する必要がある。
---------------------------------------
5)省略するときは気をつけて
上に挙げられた例は多いが、これで全てというわけではない。
PGには一般的なものがあげられているというだけで、プレイヤーは行動を省略する場合に
注意して省略を行う必要がある。
最後に。トラブルが起こった場合はジャッジを呼ぶこと。
さあ、手を挙げて!
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そんなところで。
今回のお題はPG51にある、「手順の省略/Shortcuts」について。
ひとまずPGに関する話はこれで一区切りとしますが、
何かリクエストがあれば、また書くかもしれません。神戸もあるしね。
毒消しは以前と一緒。
この記事は、私ことtestingがサイトやforumからの内容をまとめ、自分なりに解釈したものです。
実際のゲームにおいては、ヘッドジャッジまたは主催者の指示に従い、適切に大会を進行する
ようにお願いいたします。なお、本記事の内容は2008/06改訂のPGに従っており、これ以降の
更新によって、記事内に例示された内容でも解釈や罰則が変わる可能性があります。
---------------------------------------
1)手順の省略とはどのようなものか?
M:TGには優先権というものがある。この優先権がやり取りされることでゲームは進む。
優先権が無いと、プレイヤーは呪文や能力のプレイができない。
なので、自分に優先権があるかどうかを、常に把握しておかないといけない。
とはいえ、優先権のやり取りをいちいち全部確認していては、ゲームが進まない。
===============================================
A「カードをアンタップして、アップキープ・ステップに入ります。
何もせず優先権を放棄します。」
B「俺も何もしない。そのままパスする。」
A「じゃあ、ドローステップに入ります。まずカードを引きます。
そして、何もせず優先権を放棄します。」
B「俺も何もしない。そのままパスする。」
A「では、第1メイン・フェイズに・・・」
・
・
===============================================
こんなやり取りをしていたら、1ゲーム終わる前に日が暮れてしまうだろう。
大多数のプレイヤーは、上のやり取りを省略して、「アンタップ、アップキープ、ドロー」
といった意思表示を行う。これが手順の省略である。
手順の省略とは、ゲームを円滑に進めるために、プレイヤーの行動の一部を略することである。
大抵の場合、省略される行動は上記の例でもあるとおり、優先権の放棄(パス)である。
もちろん、優先権の放棄を含んだ、一連の行動をまとめて省略することも手順の省略にあたる。
(例:《目覚ましヒバリ/Reveillark》+《影武者/Body Double》を利用したループ)
が、このような場合はどこからどこまでを省略するのかを明確に示す必要があり、
プレイヤーは最終的なゲームの状態がどのようになるのかを明らかにしなくてはいけない。
---------------------------------------
2)省略された行動への介入と、巻き戻し
プレイヤーは、手順を省略された行動に対して、どこの手順においてどのように介入するかを
宣言し、省略を中断させることができる。
手順の省略によってトラブルが起こった場合、その省略された行動の一番最初まで巻き戻る。
これにより懲罰が与えられることはない。が、より注意してゲームを続ける必要がある。
宣言をしていない省略や、自分勝手に改変した省略を用いて、ゲームを曖昧にしてはいけない。
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「《灰色熊/Grizzly Bears》と、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》で攻撃。」
B「・・・どうぞ。」
A「じゃ、ブロッカーは無しだね。《灰色熊》に《巨大化》で、計6点。」
B「いやちょっとまて。《ベナリアの騎士/Benalish Knight》を瞬速でプレイして
ブロックしたいんだが。」
A「え、でも『どうぞ』って言ったよね。」
B「それは攻撃クリーチャーの選択に関して言っただけで・・・」
A「ジャッジー!!」
===============================================
この場合、AとBの手順の省略にズレがある。
Aは「Bの『どうぞ』は、ブロッククリーチャー選択ステップにBが何もせず優先権を放棄した」
Bは「攻撃クリーチャー選択ステップに、何もせず優先権を放棄して次のステップに行こうとした」
上で書いたように、省略された一番最初の行動まで巻き戻るので、ジャッジは以下のようにする。
===============================================
J「では、省略された行動を巻き戻します。
今は攻撃クリーチャー選択ステップで、Aが攻撃クリーチャーを選択した後です。
優先権をAが持っている状態から始めてください。」
A(あいつ、《ベナリアの騎士》持ってるんだよなあ・・・)
B(あんの野郎、《巨大化》あるんだよなあ・・・)
===============================================
なお、これによりジャッジは双方に罰則を与えることはない。
言葉や伝え方が不十分で、今がどちらのどのフェイズ・ステップなのかが、わからなくなる
ことは頻繁にある。このような場合、省略された行動はすべて巻き戻る。
---------------------------------------
3)優先権の要求
プレイヤーは、省略された行動のうち、好きなところで介入を試みることができる。
が、優先権を要求した場合、そのまま何もせずに優先権をパスすることは認められない。
何もしない場合、優先権は要求されなかったものとして、直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。
古典的な言葉のトリックだが、以下の例を見てみよう。
===============================================
A「戦闘終わって、第2メインフェイズへ移ります。」
B「ん、《時間の把握/Telling Time》撃ちたいんだけどいいか?」
A「? どうぞ。」
B「じゃ、俺に優先権が移ったよな。で、俺は何もしないよ。パスする。
これでお互いが連続してパスをしたから、第2メインフェイズは終了だ。」
A「ち ょ っ と ま て」
===============================================
現在、このような事はできなくなった。
Bは優先権を要求したのだから、何かしらの行動をしなくてはいけない。
何もせずパスをした場合、Aに優先権が戻る。(そして今は第2メインフェイズである)
---------------------------------------
4)伝統的な手順の省略
以下に示す手順の省略は、ゲーム内で頻繁に行われるものである。
これらに関しては「どのような手順を省略したか」が定義されている。
そのつもりで省略を行ったのではない場合、どのような省略を行いたいのかを
プレイヤーは明確に示さなくてはいけない。
#ここから先はPG51に示されている例の引用をしていくことになります。
・自分のターンに行なう「ゴー」「エンド」「どうぞ」「ダン」などの宣言は、そのプレイヤー
のターン終了ステップに優先権を非アクティブ・プレイヤーに渡すまでパスし続ける、という
ことを意味する。対戦相手は望むならその時点で何か行動することができる。
「これ以上は私から何もしません。私のターンを終了したいです。」という意思表示である。
対戦相手は、望むならばどの時点で割り込んでもよい。
例えば、「ターン終了時に」誘発する能力を誘発させたいために、
第2メインフェイズに優先権がある状態で、呪文や能力をプレイすることができる。
・「戦闘入ります」「攻撃クリーチャー選んでいい?」などの宣言は、そのプレイヤーの
戦闘開始ステップに優先権を非アクティブ・プレイヤーに渡すまでパスし続ける、
ということを意味する。対戦相手は望むならその時点で何か行動することができる。
上の場合、戦闘フェイズに入ってから優先権を放棄するまでの行動が省略されている。
重要なのは、「戦闘したいです」と言ったプレイヤーは、戦闘開始ステップまで進んでもよい、
と宣言しているとみなされることである。
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「攻撃してもいいですか?」
B「えーと、じゃあ、《首吊り罠/Trip Noose》で、あなたの《アッシェンムーアの抉り出し
/Ashenmoor Gouger》をタップ。」
A「おーけー。じゃあ、まだ僕のメインフェイズだから、《復讐の亜神/Demigod of Revenge》
をプレイして、それで殴るよ。」
B「?!」
A「だって、メインフェイズの優先権を放棄しただけだよ。」
===============================================
Aは「攻撃してもいいですか?」という発言によって、省略を行っている。
これは言い換えると、「戦闘開始ステップに移って、優先権をBに渡すまでパスをします」
という意味になる。つまり上のような事はできない。
・プレイヤーがオブジェクトをスタックに積んだ場合、特に優先権を保持すると宣言しない
限り、優先権を放棄すると仮定する。優先権を保持することを宣言せずに複数のオブジェクト
を続けてスタックに積んだ場合、プレイヤーがその途中で何か行動を取りたいと思った場合、
中断されるところまで巻き戻されるべきである。
ルールを良く知っている人ほど、この項目については違和感を覚えるだろう。CRにはこうある。
呪文や能力をプレイしたり、あるいは特別な行動を取ったりした場合、
そのプレイヤーが再び優先権を得る。(CR418.1c)
ところが上の項目は、このCRの文章と矛盾しているように見える。
オブジェクトをスタックに積んだ場合、そのプレイヤーは優先権を再び得るはずなのに、
優先権の保持を宣言しないと、「優先権を放棄した」とみなされてしまうのだ。
これはなぜか?
以下の例を見てみよう。
===============================================
A「《灰色熊/Grizzly Bears》で攻撃。」
B「はいよ。ブロックはしない。」
A「《巨大化/Giant Growth》をプレイします。」
このとき、Aの手札には《岩石樹の祈り/Stonewood Invocation》があった。
Aがこれもプレイしようかしばらく迷い、Bの顔を見てからこう言った。
A「《岩石樹の祈り》を《灰色熊》にプレイ。」
B「ちょっとまった。優先権の保持を言って無いな。割り込ませてくれ。
《突然のショック/Sudden Shock》を《灰色熊》に。」
A「え?! でも優先権をパスした覚えは無いよ。」
B「普段は、スタックに1個呪文を置いたら、すぐ解決に行こうとするだろ。
でもしばらく迷ってた。自分でプレイする意志が無くて、相手の反応を待っている
ってことは、優先権なんか要らないんじゃないか?」
===============================================
このBのプレイは適正である。(!)
優先権が自動的に保持されるという省略を行ったとしよう。そうすると、
上の例のAのように、優先権のある側は相手の反応を見ることができてしまう。
Bの顔色や手の動き、マナを数える仕草などを、優先権のある側が観察を行えるようになる。
そしてその反応が優先権の保持/パスという選択に反映されることは許されない。
もはやそれは「行動の省略」にあたらない。
プレイヤーは現在の優先権がどちらにあるかをはっきりと提示する必要がある。
・・・特に、複数のオブジェクトをスタックに乗せる場面が考えられるときは。
・戦闘中に行なう「攻撃ありません」「0体」などの宣言によって、アクティブ・プレイヤー
は戦闘終了ステップにおいて優先権をパスしたということを示す。
攻撃クリーチャーがいない場合、ブロッククリーチャー選択ステップと、戦闘ダメージステップ
は飛ばされる。この省略に関して、相手は飛ばされたステップに何かをすることはできない。
・Xの値を宣言せずにX呪文を宣言した場合、マナ・プールにあるマナをすべて使っている
ものと仮定する。
以下の例を考えてみよう。
===============================================
B「土地を16個タップして、《猛火/Blaze》。これで勝ちだろ。」
A「じゃ、《ルーンのほつれ/Rune Snag》。2マナ払ってね。」
B「実はX=13なんだ。2マナ支払うよ。どっちにせよAのライフは10点だから、勝ちだろ。」
A「な 、 な ん だ っ て ー !」
===============================================
Bは《猛火/Blaze》のXの値を宣言していない(省略している)ので、
マナ・プールにあるマナは全て使っているとみなされる。
この場合はX=15にしたとなる。3行目のBの言い分は認められない。
・プレイヤーが呪文や能力のプレイ時に、解決時に行なうべき選択を宣言した場合、
対戦相手が対応しなかったらその宣言通りの選択をしなければならない。対戦相手がその選択に
ついて尋ねた場合、それは優先権の放棄と見なし、その呪文の解決に入ることができる
以下の例を考えてみよう。
===============================================
A「《迫害/Persecute》をプレイして、色は青ね。」
B「色は解決時に選ぶものだろ。まあ、何もしないけど。」
A「そっか、じゃあ、Bは打ち消し呪文無いんだ。やっぱ青じゃなくて黒で。」
B「?!」
A「だって、解決時に色を選ぶんでしょ。」
===============================================
このようなAの選択はできない。Aは先に選択をしてしまい、Bはそれに対応しなかったので
Aは先に宣言した選択(=青)をしなくてはいけない。
もう一つ見てみよう。
===============================================
A「《迫害/Persecute》をプレイします。」
B「・・・色は?」
A「黒で。」
B「んじゃ《取り消し/Cancel》。」
===============================================
このようなBの行動は認められない。Bは選択を促しているので、
「優先権を放棄して、解決に入ってもよい」という省略を行っているとみなされる。
・コストが0の場合、特に宣言しない限りそのコストは支払われたものとする。
文字通りなので解説はしない。《厚皮のゴブリン/Thick-Skinned Goblin》の能力と
エコーの誘発忘れについての問題があるぐらいだろう。
・トランプルによるダメージは、特に宣言しない限り可能な最大値が防御側プレイヤーに
割り振られたものとする。
例えば、クリーチャー化した《樹上の村/Treetop Village》を、《灰色熊/Grizzly Bears》
でブロックされて、戦闘ダメージを割り振る際に、特に何も言わなかった場合、
割り振りは《灰色熊》に2点、プレイヤーに1点、となる。
注意深くプレイしているならば、戦闘ダメージの割り振りには特に慎重になるだろうから、
あまり気にすることではないように感じる。
・スタックにあるオブジェクトを対象とする呪文や能力は、特に宣言しない限り、
スタックの一番上にある適正な対象を対象としているものとする。
打ち消し呪文の打ち合いになった時によく出会うだろう。
途中で《差し戻し/Remand》や《誤った指図/Misdirection》がある場合は
きっちり対象を宣言する/してもらうほうが良い。
・攻撃時に特に宣言が無かった場合、そのプレイヤーがコントロールしていた場合にも、
プレインズウォーカーではなくプレイヤーに向かって攻撃しているものとする。
攻撃は普通はプレイヤーに対して行われるので、プレインズウォーカーに攻撃する場合は
きちんと宣言をしないといけない。省略した場合はプレイヤーへの攻撃とみなされる。
・双頭巨人戦でダメージがどちらの頭に割り振られているかは宣言しなければ決まらない。
必要がある場合、必要があるチームはそれを確認し、あるいは省略した場合の処理を提案すること。
例えば、一方のチームメイトが《ダメージ反転/Reverse Damage》を持っていた場合は、
相手チームの戦闘ダメージがどっちの頭(=プレイヤー)に与えられるかを確認しないと
何点のダメージを軽減できるかわからない。
なお、上の場合は《ダメージ反転》を持っているプレイヤーのチームが、確認する必要がある。
---------------------------------------
5)省略するときは気をつけて
上に挙げられた例は多いが、これで全てというわけではない。
PGには一般的なものがあげられているというだけで、プレイヤーは行動を省略する場合に
注意して省略を行う必要がある。
最後に。トラブルが起こった場合はジャッジを呼ぶこと。
さあ、手を挙げて!
-------------------------------
そんなところで。
コメント
優先権の要求と優先権の確認の違いは考慮されるんでしょうか?
非アクティブプレイヤーで優先権を得て良いかどうか確認することは結構あるのですが、これと優先権の要求とはどう区別つけるのでしょうか?
B「優先権いただいてよろしいですか?」A「はい」
B「…何もしません」A「優先権を要求して何もしないならば優先権は私に戻りますね。呪文をプレイします」
上記プレイは正当なのでしょうか?
要求は「あなたは優先権をパスして私にください。」であり、
確認は「今どっちが優先権を持っているんですか? あなたですよね?」ということかと。
> 非アクティブプレイヤーで優先権を得て良いかどうか確認することは結構あるのですが、
> これと優先権の要求とはどう区別つけるのでしょうか?
「得て良いかどうか」と聞いているんなら、それは「要求」です。
私には、それと優先権の要求との区別はつきません。
> B「優先権いただいてよろしいですか?」A「はい」
> B「…何もしません」
> A「優先権を要求して何もしないならば優先権は私に戻りますね。呪文をプレイします」
この場合はAとBが、それまでどのように優先権がやりとりしたか、もしくはどのような
手順が省略されているのかが書かれていないので、適正かどうかはなんとも言えません。
あくまで「優先権を要求して、かつ何もしない場合、(優先権のパスが連続した状態では無く)
優先権は要求されなかったものとして、直前に優先権を持っていたプレイヤーに戻される。」
というだけです。
記事本文の「3)優先権の要求」を参照してください。