モーニングタイドには"カウンター強化/Counter Booster"と呼ばれる一群のカードが存在する。
例題)
さて、《寓話の賢人/Sage of Fables》をあなたがコントロールしている状態で、
多相/Changeling を持つクリーチャー(《森林の変わり身/Woodland Changeling》)を、
あなたが場に出すと、それは+1/+1カウンターを得るだろうか?
今日はそんな、多相/Changeling と As CIPに関するお話。
--------------------------------------------------
・As CIP って?
CR419.1b-1c にある、
「[このパーマネント]は〜状態で場に出る / comes into play with ...」
「[このパーマネント]が場に出るに際し〜 / As [this] comes into play ...」
「[このパーマネント]は〜として場に出る / [this] comes into play as ...」
「[このパーマネント]は〜場に出る / [this] comes into play ...」
「[オブジェクト]は〜場に出る / [object] come into play ...」
以下の文章では、これらの効果を "As CIP" という総称で表現する。
上記の効果は「場に出る」ことに関係するが、誘発型能力(When CIP)とは異なる。
"As CIP" は、いずれも置換効果である。
・プレリじゃ乗らなかった。
旧CRに従うと、この場合は「+1/+1カウンターは乗らない。」となる。
それはなぜかというと、場に出る際に働く効果は置換効果である(CR419.1b-1c) ので、
それらの効果は、そのパーマネントが場に存在するようになる時点でのコピー可能な特性の値
だけを参照することになる。(旧CR419.6i)
上の例で説明すると、《森林の変わり身/Woodland Changeling》が場に出る際には
コピー可能な特性の値を参照することになる。
この場合は《寓話の賢人》の効果を考えるから、サブタイプの値を見ると、
クリーチャー -- 多相の戦士
であるので、このカードはウィザードではない(!)
ということは《寓話の賢人》の条件には合わないので、+1/+1カウンターは乗らない。
・このカードはどこにあるの?
しかし、この結果は直感的におかしい。(カードの本来の動作から外れている、の意)
多相/Changeling は特性定義能力(CDA)であり、それは全ての領域で働くはずである。(CR405.2)
上の場合だと、《森林の変わり身》はスタック領域から場領域に移動しただけであり、
決して領域以外の場所に移動したわけではないので、特性定義能力は機能しつづけている。
にもかかわらず、前述したとおり「このカードはウィザードではない」と言われて、
場領域にやって来るのだ。さあ、このカードはどこからやって来たのだろうか?
この部分にCRのほころびが見える。
・かくしてCRは修正され・・・
ルール・グルたちはこの問題に対して、CRの一部を修正することで矛盾なくカードを
機能させることにした。キーとなる更新箇所は以下の項目である。
以前はそのパーマネントが場にある時点でのコピー可能な特性の値だけを参照していた。
が、CRが改訂されて
a) 場に出ることに影響を及ぼす置換効果のうちですでに適用したもの
b) 呪文や能力の解決によって生成された継続的効果のうちで、スタック上にある時点で
そのパーマネントの特性を変更したもの (→ CR217.1c)
c) そのパーマネントの常在型能力からの継続的効果
以上を考慮した「パーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」を参照することになった。
・・・ok。
このままだとあまりにCR的な文章なので、具体例を挙げてa)〜c)を説明する。
a) は《クローン/Clone》を例に取るとわかりやすいだろう。
場にあなたのコントロールする《寓話の賢人》があり、あなたは《クローン》をプレイした。
あなたはこの《クローン》を、《寓話の賢人》のコピーにしたいと考えた。
これが場に出る際には、2つの置換効果を受ける。
i) 《クローン》の「場に出るに際し〜コピーとなる」効果
ii)《寓話の賢人》の "As CIP" 効果
i) の置換効果を先に適用すると、《クローン》は《寓話の賢人》のコピーとなる。
続けてii)の効果を適用する。「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
でサブタイプを参照すると、その答えは「マーフォーク・ウィザード」であるので、
このパーマネントは+1/+1カウンターを伴って場に出る。
逆に、ii)を先に適用すると「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
でサブタイプを参照すると、その答えは( i)の効果をまだ適用していないので)「多相の戦士」である。
つまりこのパーマネントはウィザードではないので、+1/+1カウンターを得ない。
b) はCR217.1cの文章内での1)を参照してもらいたい。
例を挙げると、スタック上の《灰色熊/Grizzly Bears》を、《人工進化/Artificial Evolution》
で「熊」を「ウィザード」に書き換える。すると、この《灰色熊》はスタック上にある時点で
特性を変更されたものである。よって、《寓話の賢人》により+1/+1カウンターを得て場に出る。
c) はまさしく今回の記事のテーマそのものである。
多相/Changeling は特性定義能力なので、それは常在型能力であり、その効果は継続的効果である。
つまり、《森林の変わり身》がスタックから場領域に出る際には、多相の能力が考慮されて
「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」のうち、サブタイプを参照すると
その答えは「全てのクリーチャー・タイプ」である。
よって、《森林の変わり身》は《寓話の賢人》により、+1/+1カウンターを得て場に出る。
・結論、そして《奸謀/Conspiracy》
元々の例題の答えだが、《寓話の賢人》をコントロールしているときに《森林の変わり身》を
場に出すと、それは+1/+1カウンターを得て場に出るという結論に達した。
そうかと言って、FAQにある以下の文章が間違っているわけではない。
《奸謀/Conspiracy》で「ウィザード」を指定し、元々ウィザードで無いクリーチャーを
場に出すことになった場合、それは《寓話の賢人》による+1/+1カウンターを得ない。
なぜか?
「パーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」で考慮されるのは前述のa)〜c)である。
《奸謀/Conspiracy》は、
・置換効果ではないので a) ではない。
・呪文や能力の解決によって生成された継続的効果ではないので b) ではない。
・「そのパーマネント」の常在型能力ではないので c) ではない。
以上により、上記特性を参照するときに《奸謀》の効果は考慮されることが無い。よって
元々ウィザードでないクリーチャーは《寓話の賢人》による+1/+1カウンターを得ない。
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そんなところで。
《寓話の賢人/Sage of Fables》
あなたがコントロールする他の各ウィザード(Wizard)は、その上に追加の+1/+1カウンターが
1個置かれた状態で場に出る。
Each other Wizard creature you control comes into play with an additional +1/+1 counter on it.
例題)
さて、《寓話の賢人/Sage of Fables》をあなたがコントロールしている状態で、
多相/Changeling を持つクリーチャー(《森林の変わり身/Woodland Changeling》)を、
あなたが場に出すと、それは+1/+1カウンターを得るだろうか?
今日はそんな、多相/Changeling と As CIPに関するお話。
--------------------------------------------------
・As CIP って?
CR419.1b-1c にある、
「[このパーマネント]は〜状態で場に出る / comes into play with ...」
「[このパーマネント]が場に出るに際し〜 / As [this] comes into play ...」
「[このパーマネント]は〜として場に出る / [this] comes into play as ...」
「[このパーマネント]は〜場に出る / [this] comes into play ...」
「[オブジェクト]は〜場に出る / [object] come into play ...」
以下の文章では、これらの効果を "As CIP" という総称で表現する。
上記の効果は「場に出る」ことに関係するが、誘発型能力(When CIP)とは異なる。
"As CIP" は、いずれも置換効果である。
・プレリじゃ乗らなかった。
旧CRに従うと、この場合は「+1/+1カウンターは乗らない。」となる。
それはなぜかというと、場に出る際に働く効果は置換効果である(CR419.1b-1c) ので、
それらの効果は、そのパーマネントが場に存在するようになる時点でのコピー可能な特性の値
だけを参照することになる。(旧CR419.6i)
上の例で説明すると、《森林の変わり身/Woodland Changeling》が場に出る際には
コピー可能な特性の値を参照することになる。
この場合は《寓話の賢人》の効果を考えるから、サブタイプの値を見ると、
クリーチャー -- 多相の戦士
であるので、このカードはウィザードではない(!)
ということは《寓話の賢人》の条件には合わないので、+1/+1カウンターは乗らない。
・このカードはどこにあるの?
しかし、この結果は直感的におかしい。(カードの本来の動作から外れている、の意)
多相/Changeling は特性定義能力(CDA)であり、それは全ての領域で働くはずである。(CR405.2)
上の場合だと、《森林の変わり身》はスタック領域から場領域に移動しただけであり、
決して領域以外の場所に移動したわけではないので、特性定義能力は機能しつづけている。
にもかかわらず、前述したとおり「このカードはウィザードではない」と言われて、
場領域にやって来るのだ。さあ、このカードはどこからやって来たのだろうか?
この部分にCRのほころびが見える。
・かくしてCRは修正され・・・
ルール・グルたちはこの問題に対して、CRの一部を修正することで矛盾なくカードを
機能させることにした。キーとなる更新箇所は以下の項目である。
419.6i
Some replacement effects modify how a permanent comes into play. (See rules 419.1b-c.)
Such effects may come from the permanent itself if they affect only that permanent
(as opposed to a general subset of permanents that includes it). They may also
come from other sources. To determine how and whether these replacement effects
apply, check the characteristics of the permanent as it would exist in play,
taking into account replacement effects that have already modified how it comes
into play, continuous effects generated by the resolution of spells or abilities
that changed the permanent’s characteristics on the stack (see rule 217.1c),
and continuous effects from the permanent’s own static abilities, but ignoring
continuous effects from any other source that would affect it.
以前はそのパーマネントが場にある時点でのコピー可能な特性の値だけを参照していた。
が、CRが改訂されて
a) 場に出ることに影響を及ぼす置換効果のうちですでに適用したもの
b) 呪文や能力の解決によって生成された継続的効果のうちで、スタック上にある時点で
そのパーマネントの特性を変更したもの (→ CR217.1c)
c) そのパーマネントの常在型能力からの継続的効果
以上を考慮した「パーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」を参照することになった。
・・・ok。
このままだとあまりにCR的な文章なので、具体例を挙げてa)〜c)を説明する。
a) は《クローン/Clone》を例に取るとわかりやすいだろう。
場にあなたのコントロールする《寓話の賢人》があり、あなたは《クローン》をプレイした。
あなたはこの《クローン》を、《寓話の賢人》のコピーにしたいと考えた。
これが場に出る際には、2つの置換効果を受ける。
i) 《クローン》の「場に出るに際し〜コピーとなる」効果
ii)《寓話の賢人》の "As CIP" 効果
i) の置換効果を先に適用すると、《クローン》は《寓話の賢人》のコピーとなる。
続けてii)の効果を適用する。「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
でサブタイプを参照すると、その答えは「マーフォーク・ウィザード」であるので、
このパーマネントは+1/+1カウンターを伴って場に出る。
逆に、ii)を先に適用すると「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
でサブタイプを参照すると、その答えは( i)の効果をまだ適用していないので)「多相の戦士」である。
つまりこのパーマネントはウィザードではないので、+1/+1カウンターを得ない。
b) はCR217.1cの文章内での1)を参照してもらいたい。
例を挙げると、スタック上の《灰色熊/Grizzly Bears》を、《人工進化/Artificial Evolution》
で「熊」を「ウィザード」に書き換える。すると、この《灰色熊》はスタック上にある時点で
特性を変更されたものである。よって、《寓話の賢人》により+1/+1カウンターを得て場に出る。
c) はまさしく今回の記事のテーマそのものである。
多相/Changeling は特性定義能力なので、それは常在型能力であり、その効果は継続的効果である。
つまり、《森林の変わり身》がスタックから場領域に出る際には、多相の能力が考慮されて
「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」のうち、サブタイプを参照すると
その答えは「全てのクリーチャー・タイプ」である。
よって、《森林の変わり身》は《寓話の賢人》により、+1/+1カウンターを得て場に出る。
・結論、そして《奸謀/Conspiracy》
元々の例題の答えだが、《寓話の賢人》をコントロールしているときに《森林の変わり身》を
場に出すと、それは+1/+1カウンターを得て場に出るという結論に達した。
そうかと言って、FAQにある以下の文章が間違っているわけではない。
《奸謀/Conspiracy》で「ウィザード」を指定し、元々ウィザードで無いクリーチャーを
場に出すことになった場合、それは《寓話の賢人》による+1/+1カウンターを得ない。
なぜか?
「パーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」で考慮されるのは前述のa)〜c)である。
《奸謀/Conspiracy》は、
・置換効果ではないので a) ではない。
・呪文や能力の解決によって生成された継続的効果ではないので b) ではない。
・「そのパーマネント」の常在型能力ではないので c) ではない。
以上により、上記特性を参照するときに《奸謀》の効果は考慮されることが無い。よって
元々ウィザードでないクリーチャーは《寓話の賢人》による+1/+1カウンターを得ない。
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そんなところで。
コメント
#こうなったら、石を用意しとかなきゃ。
> 続けてii)の効果を適用する。「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
> でサブタイプを参照すると、その答えは「マーフォーク・ウィザード」であるので、
> このパーマネントは+1/+1カウンターを伴って場に出る。
>
> 逆に、ii)を先に適用すると「そのパーマネントが場に出た時点で取るであろう特性」の中
> でサブタイプを参照すると、その答えは( i)の効果をまだ適用していないので)「多相の戦士」である。
> つまりこのパーマネントはウィザードではないので、+1/+1カウンターを得ない。
この場合、(i)→(ii)の順でしか適用できないそうです。
⇒ Astral Guild
【質問は】スレ立てるまでもない質問をするスレ【ここで】
http://forum.astral-guild.net/board/21/15/536-538