<状況1>

プレイヤーAは0/5の《根の壁/Wall of Roots》をコントロールしている。
プレイヤーBが、3/3の象・トークンで攻撃してきた。
Bの手札は潤沢にあり、自由に使えるマナ・ソースもある。
Aはこの象・トークンを、《根の壁》でブロックすべきか迷った。

A(さすがに・・・何かあるよなあ?)

Aは結局ブロックしないことを選んだ。


<状況2>

《黄泉からの橋》から出たトークンを見て。
A「そのトークンは何だっけ?」
B「黒のゾンビ・トークンで、2/2だよ。
A「じゃあ、そいつに《ショック/Shock》。」
B「はい。(といいつつ次のプレイを促す)」
A「あれ? トークンは消えるんじゃ?」
B「場に《不吉の月/Bad Moon》があるからね。破壊されないよ。」


<状況3>

お互いにスリヴァーがたくさん並んでいる。

A「これだけスリヴァーが多いとややこしいな。」
B「その《湿布スリヴァー/Poultice Sliver》のパワー/タフネスっていくつ?」
A「けっこうでかいよ。
B「・・・」


上記の<状況1>〜<状況3>は、実際のゲームで起こりうることを示したものである。
それぞれについて、罰則の対象になるものはあるだろうか? 全て認められる行為だろうか?

今日はこんな "communication policy" についてのお話。

おっと、毒消しをしておこうかね。

この記事は、私ことtestingが公式サイトやforumからの内容をまとめ、
自分なりに解釈したものです。
実際のゲームにおいては、ヘッドジャッジもしくは主催者の指示に従い、
適切に大会を進行するようにお願いいたします。
なお、本記事の内容は2007/09改訂のPGに従っており、これ以降の更新によって
例示された内容でも、解釈や罰則が変わる可能性があります。


 
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駆け引きというのはゲームにおいて重要な要素である。

上の<状況1>は、よくある序盤の光景である。
そのままだと意味がないのに、手札とマナをもったまま攻撃すれば、
相手は何かあると思うだろう。あわよくば何も無くても攻撃は通るかもしれない。

<状況1>を「意図的なミスを誘う非紳士的行為だ!」というプレイヤーは、おそらくいない。

このような、効果的なはったり(ブラフ)は、ゲームの要素としては重要である。
残り数点分のライフを削り取るのに一役買うかもしれないし、
《島/Island》をたくさん立て、手札を潤沢にすれば、それだけで相手はカードを使うのを
ためらうかもしれない。たとえ手札が土地ばかりだとしても。

ところが、はったりを『言う』ことに関しては、受け側のプレイヤーによって心象が変わる。

  「手札に《対抗呪文/Counterspell》があるよ。」
  「次のターンに全員で攻撃したら、僕の勝ちだね。」
  「ノープロブレム。きっと一番上は火力だ。」
   ・・・等々。

これまでは、はったりと懲罰に値する行為(=詐欺行為)に関しては明確な線引きがなく、
全て常識に従って行われていた。

今回改訂されたPGには、50番の項目に『意思疎通規定』が追加された。
これにより、プレイヤーのふるまいや言動のどこまでがはったりとして許容され、
どこからが詐欺行為として懲罰に値するのか、という線引きが行われた。

 
DCIの哲学

  DCIは哲学として、プレイヤーは「ゲームのルールをよく理解していること」「現在の
  局面にある相互作用によく気付くこと」「よい戦術的計画」によって有利をえるべき
  だと考えている。
  プレイヤーはゲームの進行中に対戦相手を助ける必要はないが、物理的に示されて
  いないデータを対戦相手に伝えないことによって局面を正しく認識できないことは
  認められない。(PG50.)

DCIはプレイヤーに対して、ルールに即した盤面をよく理解したうえで、戦術を練り、
それによって相手よりも上のプレイをすることを奨励している。これはいわゆる
『プレイング』という考えそのものである。相手のプレイングを上回るプレイングを
することによってゲームを優位に進めることは、ゲームに勝利するために不可欠である。

ただし、ゲーム中の情報を正しく認識できないようにする行為は禁じられている。
たとえば、ほとんど同じオハジキを使用して、+1/+1カウンターと蓄積カウンターを
同時に同じパーマネントに乗せたり、あいまいに土地を傾けて一見タップ状態なのか
アンタップ状態なのかを見分けにくくしたりすることは、認められない。

 
礼儀正しく

  状況によらず、プレイヤーは礼儀正しく敬意をもって対戦相手に接することが
  求められている。そうしない場合、非紳士的行為の懲罰を受けることになりうる。
  (PG50.)

「当然じゃないか。」と思われるプレイヤーもいることだろう。もちろんそれは正しい。
ただ、どこまでが礼儀正しいのかの線引きはルールに示されるべきではないし、
ここで論じることでもない。非紳士的行為であるか否かの判断はジャッジが行う。

 
意思疎通の大原則

  意思疎通に関する大原則は以下のとおり。
  現在進行中のゲームに関する発言は、知りうる限りで真実でなければならない。
  しかし、網羅的である必要はなく、慎重な省略や『非回答』によって対戦相手に
  最適解を導かせない(ただし不正行動ではない)プレイは許容される。(PG50.)

大原則(=Golden Rule:#黄金律(CR103)じゃないのね)が示されている。

大原則の1文目において、プレイヤーは正直であることが必要だとされている。
ゲームに関する発言において嘘をついてはいけない。
 (「当たり前だ!」と感じるそこのあなた。あなたは正しい。)

プレイヤーは時にゲームに関して間違えた発言をすることがある。そのような場合は
PGに示されている「PG120.ゲームルール上の誤り(GPE)」による罰則が与えられる。
ただし、ジャッジはそれが意図的に間違えていたかどうかを確認する必要がある。

2文目に示されている内容は、かなり深い内容をその内部に秘めている。

上に示されている<状況2>を例にとろう。
プレイヤーAが必要な情報はトークンのタフネスであり、《ショック/Shock》
でそれを倒せるかどうか、が問題になっている。ところがプレイヤーBから得られた
情報はトークンの元々の値が2/2であるというだけで、他の修正(この場合は《不吉の月》)
を考慮した値ではないのだ。
さて、プレイヤーBは、"意思疎通に反した" 罪に値するだろうか?

答えは「否」である。
プレイヤーBの発言は嘘ではない完全な真実であり、大原則に従い許容される発言である。
たしかに、Bは場の《不吉の月》によってトークンは3/3になっている事を省略しているが、
Aから聞かれた質問は「そのトークンは何か?」であるから、最低限明らかにしなくては
いけない情報をBは正確に発言している。なのでBが罰をうけることは全くない。

 
大原則の適用例

  ・非公開の情報に関する発言は、あらゆる意味において、正確である必要はない。
   非公開の情報の内容を含むブラフは、ゲームに不可欠である。
  ・今後の局面や今後の行動に関する発言は、正確である必要はない。その発言以降に、
   その発言が正しくなりえたかどうかは重要ではない。(PG50.)

手札やライブラリーにあるカードに関して何を言ってもかまわないし、それが真実で
あるかどうかは全く関係がない。前出の例、
  「手札に《対抗呪文/Counterspell》があるよ。」
  「次のターンに全員で攻撃したら、僕の勝ちだね。」
  「ノープロブレム。きっと一番上は火力だ。」
これらは全て大原則に従った許容される発言である。


  ・プレイヤーは、ゲームの物理的状況(タップ状態か否か、反転状態か否か、
   オブジェクトがどの領域にあるか)が常にはっきり判るように保つ責任がある。

当然といえば当然の行為であるので、特に解説はしない。


  ・プレイヤーが対戦相手に質問したとき、ほとんどの場合、対戦相手は答えない
   ことが認められている。回答することを選んだ場合、上記の大原則を遵守すること。

答えなければならない質問はあるが、それ以外の質問には「答えない」という選択肢が
常に用意されている。答える場合は大原則に従わなくてはいけない。
もっと簡単に言うと、答える場合は嘘をついてはいけない、ということだ。


  ・アクティブ・プレイヤーの直前のターンから現在までに取ったゲームの行動に
   関する問いには、プレイヤーは完全に、また誠実に、問いに答える義務を持つ。
  ・物理的状況ならびにアクティブ・プレイヤーの直前のターンから現在までに取った
   ゲームの行動によっては特定できないゲームの局面に関する問いには、プレイヤーは
   完全に、また誠実に、問いに答える義務を持つ。

 「どれに《巨大化/Giant Growth》をプレイしたんですか?」
 「このターンに何回呪文をプレイしましたか?」
 「その《真髄の針/Pithing Needle》は何を宣言しましたか?」

といった問いには完全に、誠実に問いに答えなくてはならない。これらはいずれも
現在のゲームの局面を正確に把握するための基本的な情報なので、これらについて
だんまりを決め込んだり、あやふやに答えたり、嘘をついたり(!)してはいけない。


  ・プレイヤーが対戦相手に質問することを選ばなかったり、必要な情報を得られなかった
   と思ったりした場合、ジャッジを呼んでもよい。ジャッジによる質問に対しては、
   プレイヤーは必ず(正確に、完全に)答えなければならないが、対戦相手に聞こえ
   ないようにテーブルを離れてから答えてもよい。


プレイヤー間で処理できない問題はどうするか? その場合はジャッジを呼ぶしかない。


  ・プレイヤーは、ゲームの局面を認識する責任がある。ジャッジは基本的に、
   プレイヤーが現在のゲームの局面を決定することを助けることはしないが、
   ルールやカードの相互作用、ならびに関連するカードのオラクルによる文章に
   ついての問いに答えることはできる。一般RELにおいては、ジャッジは教育の
   ためにゲームの局面を理解することを助けてもよい。


<状況3>を例に取ろう。

赤文字で書いたAの発言は大原則に従った発言(=非回答)であり、許容される。
この場合、Bは欲しい答(P/T)を得られていないので、ジャッジを呼んだとしよう。

  B「ジャッジー!」
  J「はいはい。いかがなされた?」
  B「(指差して)この《湿布スリヴァー》のパワー/タフネスはいくつですか?」

この質問にジャッジは答えることはできない。
もちろんジャッジはP/Tの値を正確に言うことはできる。が、それはBがゲームの局面を
決定するための手助けになってしまうので、それを言うことはできない。
プレイヤーは現在のゲームの局面を認識する責任がある。
「ゲームのルールをよく理解し」「現在の局面にある相互作用によく気付くこと」
ができているならば、このような質問(=P/Tはいくつですか?)が出てくることは一切ない。

それでも、プレイヤーはこのような質問をすると思われる。
ジャッジはこのような場合、次のような助け舟を出すべきだろう。

 J「ルールのどの部分、もしくはどのカードについての動きがわからないのですか?」
 B「このスリヴァーによる修正と、このエンチャントによる修正の、どちらが先なのか
  わかりません。」
 J「それらの修正はどちらも第6d種に分類されるので、タイムスタンプ順に処理をします。」

RELが一般であるならば、ジャッジはおもむろに答えを言ってもよい。
が、その後に解説をつけ、プレイヤーを教育することの方が重要である。
いずれ上のRELになれば、そのような答えはえられないのだから。


  ・プレイヤーは、誤解しうる発言で対戦相手に不正な行動をさせてはならない。
   プレイヤーは、不正な行動が起こったと対戦相手に偽ってはならない。


「前のターンに《殺戮の契約/Slaughter Pact》プレイしたよねえ。」
このような発言をして、実際には打ち消されたはずの《殺戮の契約》の誘発型能力を
誘発したように見せかけて、相手に不正な行動をさせる、ということはしてはならない。

まとめ

プレイヤーが、誠実に答えなくてはならない / 答えなくてもよい / 何を言ってもかまわない
ことについて以下にまとめておこう。

1)過去にプレイヤーがとった行動や、それによって特定される直には見えない情報:
  →完全に、かつ誠実に問いに答えなくてはならない。「答えない」という選択肢は無い。

  例えば《真髄の針/Pithing Needle》で指定した名前や、
  このターンに《サイカトグ/Psychatog》を何回パンプしたか? という問いには
  完全に、かつ誠実に問いに答えなくてはいけない。

2)直に見ることのできるゲームの情報や、ルール的な情報:
  →答えなくてもよい。答える場合は、大原則に従って答えなくてはいけない。

  例えば《有毒グール/Noxious Ghoul》のオラクルはどうだったか? や、
  そのクリーチャーのパワーはいくつ? という問いには答えなくてもよい。
  答える場合は大原則に従わなくてはいけない。

3)非公開の情報、未来の行動や局面に関する情報:
  →何を言ってもかまわない。

  さあ、はったりをカマそうじゃないか。

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これについてはいろんな意見があるものと思われます。
コメント欄は開放しておきますので好き勝手にどぞ。

コメント

nophoto
アラジソ
2007年9月13日17:51

答えなくてもよい質問に対して、プレイヤーがウインクしながら
「禁則事項です(はぁと)」
と回答した場合、紳士的かどうか判断に悩むのは私だけでしょうか?

nophoto
やまぴい
2007年9月13日23:04

アラジンさんがやると、非紳士的行為になるでしょう。:-D

testing
testing
2007年9月13日23:27

まーそーゆーわけで、紳士的でないというくだりは、文書にして変に明確化しちゃいかんわけです。はい。

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