いつもお世話になっている(よけいな世話かもしれないが)、Wisdom Guildから
良質のネタがあったので、発言したついでにちょいと長く書こうと思う。
(どこの発言かは察して欲しい)

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1)特性定義能力

特性定義能力(characteristic-setting ability : CSA)は、オブジェクトになんらかの特性値を
与える能力である。何らかの特性値を「持つ/has」、または特定のタイプ、特殊タイプ、サブタイプ、
色で「ある/is」という常在型能力が印刷された状態で存在する。

これらはオブジェクトの特性を決定する能力であるが、他の呪文や能力によって上書きされたり、
変化することがあるのは容易に理解できると思う。

たとえば、《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》の文章は

    ギルド渡りの急使はすべての色である。(場に無いときも含む。)
    Transguild Courier is all colors (even if this card isn’t in play).

とあるので、これは特性定義能力である。

この後、場に《真に暗き時間/Darkest Hour》が出たとすると、場にある《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》
は、全ての色ではなく、「黒」となる。(上書きされる)

 
2)エンチャントなどによる能力付与

《眼球の輪/Ocular Halo》の文章を以下に出す。

    エンチャント(クリーチャー)
    エンチャントされているクリーチャーは「(T):カードを1枚引く。」の能力を持つ。
    (白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。
    Enchant creature
    Enchanted creature has "{T}: Draw a card."
    {W}: Enchanted creature gains vigilance until end of turn.

さて、《灰色熊/Grizzly Bears》に《眼球の輪/Ocular Halo》がエンチャントされているとする。
《灰色熊/Grizzly Bears》は当然「{Tap}:カードを1枚引く」という起動型能力を得るが、
これは「has/持つ」で書かれているので、特性定義能力なのだろうか?

答えはノーである。
CR405.2.(略)
その能力を持つオブジェクト以外の特性を操作する能力や、そのオブジェクト自身に与えられた能力は
特性定義能力ではない。(略)


つまり、オーラやその他の効果(例:《炎の一斉攻撃/Flame Fusillade》)によって、オブジェクトに
与えられた能力は、特性定義能力ではないのだ。

 
3)クラージの問題

以下の状況を考えてみよう。

+1/+1カウンターが1個置かれている《灰色熊/Grizzly Bears》に、《眼球の輪/Ocular Halo》が
エンチャントされている。さて、横には《クラージ実験体/Experiment Kraj》がいる。
《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得るだろうか?

《クラージ実験体/Experiment Kraj》のテキストを見ると、

    クラージ実験体は、その上に+1/+1カウンターが置かれている他の各クリーチャーの
    全ての起動型能力を持つ

なので、この能力は特性定義能力である。

CR418.5.に従うと、まず特性定義能力を適用し、それから他の効果を適用するので、
《眼球の輪》によって《灰色熊》が得た「{Tap}:カードを1枚引く」という能力(ああややこしい!)
を、《クラージ実験体/Experiment Kraj》が得ることはできない。

……と、思える。しかしこの考え方は間違いである。

それは依存という考え方を忘れているからだ。
くわしくは、CR418.5d.を参照してもらうとして、この例での解説を進める。

《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》が適用されるか、されないかで
最終的な特性が変わってしまう。
つまり、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》に"依存"している。

一方、《眼球の輪/Ocular Halo》は、《クラージ実験体/Experiment Kraj》があろうが無かろうが、
全く影響しない。つまり、独立している。

1つまたは複数の効果に依存している効果は、その依存先の効果全てが適用されてからすぐに適用する
ので、適用は常に《眼球の輪/Ocular Halo》が先になる。

結局、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得る。

 
4)カードを良く読もう

上記の例では、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という
能力を得ることがわかった。では、《眼球の輪/Ocular Halo》のもう一方の能力、
「(白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。」
はどうだろうか?

賢明な人ならばおわかりの通り、《クラージ実験体/Experiment Kraj》がこの能力を得ることはない。

なぜなら、この能力は《眼球の輪/Ocular Halo》が持つ能力であり、エンチャントされたクリーチャー
(この場合は《灰色熊/Grizzly Bears》)が持つ起動型能力では無いからだ。

カード・テキストは良く読まないと、落とし穴に落ちる。(私も、もう何回も落ちたことだか。)

ややこしい事態になったら、まず深呼吸。
そして、カードを落ち着いて読むこと。

これを心がけるだけで、ずいぶんとつまらないミスを無くすことができる。

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そんなところで。

コメント

nophoto
なまえはまだない
2006年5月24日17:41

+1/+1カウンターが乗っているサイクリング能力を持つクリーチャーが場に存在したとき、手札のクラージ実験体はサイクリングできますか?

testing
testing
2006年5月24日21:41

>なまえはまだない さん
いいえ。サイクリングすることはできません。
そもそも《クラージ実験体/Experiment Kraj》の能力は、パーマネントになっている時にのみ適用されます。
手札にあるときには適用されませんので、サイクリングを持つこともありません。

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