Dependency and CSA.
2006年5月24日コメント (2)いつもお世話になっている(よけいな世話かもしれないが)、Wisdom Guildから
良質のネタがあったので、発言したついでにちょいと長く書こうと思う。
(どこの発言かは察して欲しい)
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1)特性定義能力
特性定義能力(characteristic-setting ability : CSA)は、オブジェクトになんらかの特性値を
与える能力である。何らかの特性値を「持つ/has」、または特定のタイプ、特殊タイプ、サブタイプ、
色で「ある/is」という常在型能力が印刷された状態で存在する。
これらはオブジェクトの特性を決定する能力であるが、他の呪文や能力によって上書きされたり、
変化することがあるのは容易に理解できると思う。
たとえば、《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》の文章は
ギルド渡りの急使はすべての色である。(場に無いときも含む。)
Transguild Courier is all colors (even if this card isn’t in play).
とあるので、これは特性定義能力である。
この後、場に《真に暗き時間/Darkest Hour》が出たとすると、場にある《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》
は、全ての色ではなく、「黒」となる。(上書きされる)
2)エンチャントなどによる能力付与
《眼球の輪/Ocular Halo》の文章を以下に出す。
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは「(T):カードを1枚引く。」の能力を持つ。
(白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。
Enchant creature
Enchanted creature has "{T}: Draw a card."
{W}: Enchanted creature gains vigilance until end of turn.
さて、《灰色熊/Grizzly Bears》に《眼球の輪/Ocular Halo》がエンチャントされているとする。
《灰色熊/Grizzly Bears》は当然「{Tap}:カードを1枚引く」という起動型能力を得るが、
これは「has/持つ」で書かれているので、特性定義能力なのだろうか?
答えはノーである。
CR405.2.(略)
その能力を持つオブジェクト以外の特性を操作する能力や、そのオブジェクト自身に与えられた能力は
特性定義能力ではない。(略)
つまり、オーラやその他の効果(例:《炎の一斉攻撃/Flame Fusillade》)によって、オブジェクトに
与えられた能力は、特性定義能力ではないのだ。
3)クラージの問題
以下の状況を考えてみよう。
+1/+1カウンターが1個置かれている《灰色熊/Grizzly Bears》に、《眼球の輪/Ocular Halo》が
エンチャントされている。さて、横には《クラージ実験体/Experiment Kraj》がいる。
《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得るだろうか?
《クラージ実験体/Experiment Kraj》のテキストを見ると、
クラージ実験体は、その上に+1/+1カウンターが置かれている他の各クリーチャーの
全ての起動型能力を持つ。
なので、この能力は特性定義能力である。
CR418.5.に従うと、まず特性定義能力を適用し、それから他の効果を適用するので、
《眼球の輪》によって《灰色熊》が得た「{Tap}:カードを1枚引く」という能力(ああややこしい!)
を、《クラージ実験体/Experiment Kraj》が得ることはできない。
……と、思える。しかしこの考え方は間違いである。
それは依存という考え方を忘れているからだ。
くわしくは、CR418.5d.を参照してもらうとして、この例での解説を進める。
《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》が適用されるか、されないかで
最終的な特性が変わってしまう。
つまり、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》に"依存"している。
一方、《眼球の輪/Ocular Halo》は、《クラージ実験体/Experiment Kraj》があろうが無かろうが、
全く影響しない。つまり、独立している。
1つまたは複数の効果に依存している効果は、その依存先の効果全てが適用されてからすぐに適用する
ので、適用は常に《眼球の輪/Ocular Halo》が先になる。
結局、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得る。
4)カードを良く読もう
上記の例では、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という
能力を得ることがわかった。では、《眼球の輪/Ocular Halo》のもう一方の能力、
「(白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。」
はどうだろうか?
賢明な人ならばおわかりの通り、《クラージ実験体/Experiment Kraj》がこの能力を得ることはない。
なぜなら、この能力は《眼球の輪/Ocular Halo》が持つ能力であり、エンチャントされたクリーチャー
(この場合は《灰色熊/Grizzly Bears》)が持つ起動型能力では無いからだ。
カード・テキストは良く読まないと、落とし穴に落ちる。(私も、もう何回も落ちたことだか。)
ややこしい事態になったら、まず深呼吸。
そして、カードを落ち着いて読むこと。
これを心がけるだけで、ずいぶんとつまらないミスを無くすことができる。
==================
そんなところで。
良質のネタがあったので、発言したついでにちょいと長く書こうと思う。
(どこの発言かは察して欲しい)
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1)特性定義能力
特性定義能力(characteristic-setting ability : CSA)は、オブジェクトになんらかの特性値を
与える能力である。何らかの特性値を「持つ/has」、または特定のタイプ、特殊タイプ、サブタイプ、
色で「ある/is」という常在型能力が印刷された状態で存在する。
これらはオブジェクトの特性を決定する能力であるが、他の呪文や能力によって上書きされたり、
変化することがあるのは容易に理解できると思う。
たとえば、《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》の文章は
ギルド渡りの急使はすべての色である。(場に無いときも含む。)
Transguild Courier is all colors (even if this card isn’t in play).
とあるので、これは特性定義能力である。
この後、場に《真に暗き時間/Darkest Hour》が出たとすると、場にある《ギルド渡りの急使/Transguild Courier》
は、全ての色ではなく、「黒」となる。(上書きされる)
2)エンチャントなどによる能力付与
《眼球の輪/Ocular Halo》の文章を以下に出す。
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは「(T):カードを1枚引く。」の能力を持つ。
(白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。
Enchant creature
Enchanted creature has "{T}: Draw a card."
{W}: Enchanted creature gains vigilance until end of turn.
さて、《灰色熊/Grizzly Bears》に《眼球の輪/Ocular Halo》がエンチャントされているとする。
《灰色熊/Grizzly Bears》は当然「{Tap}:カードを1枚引く」という起動型能力を得るが、
これは「has/持つ」で書かれているので、特性定義能力なのだろうか?
答えはノーである。
CR405.2.(略)
その能力を持つオブジェクト以外の特性を操作する能力や、そのオブジェクト自身に与えられた能力は
特性定義能力ではない。(略)
つまり、オーラやその他の効果(例:《炎の一斉攻撃/Flame Fusillade》)によって、オブジェクトに
与えられた能力は、特性定義能力ではないのだ。
3)クラージの問題
以下の状況を考えてみよう。
+1/+1カウンターが1個置かれている《灰色熊/Grizzly Bears》に、《眼球の輪/Ocular Halo》が
エンチャントされている。さて、横には《クラージ実験体/Experiment Kraj》がいる。
《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得るだろうか?
《クラージ実験体/Experiment Kraj》のテキストを見ると、
クラージ実験体は、その上に+1/+1カウンターが置かれている他の各クリーチャーの
全ての起動型能力を持つ。
なので、この能力は特性定義能力である。
CR418.5.に従うと、まず特性定義能力を適用し、それから他の効果を適用するので、
《眼球の輪》によって《灰色熊》が得た「{Tap}:カードを1枚引く」という能力(ああややこしい!)
を、《クラージ実験体/Experiment Kraj》が得ることはできない。
……と、思える。しかしこの考え方は間違いである。
それは依存という考え方を忘れているからだ。
くわしくは、CR418.5d.を参照してもらうとして、この例での解説を進める。
《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》が適用されるか、されないかで
最終的な特性が変わってしまう。
つまり、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、《眼球の輪/Ocular Halo》に"依存"している。
一方、《眼球の輪/Ocular Halo》は、《クラージ実験体/Experiment Kraj》があろうが無かろうが、
全く影響しない。つまり、独立している。
1つまたは複数の効果に依存している効果は、その依存先の効果全てが適用されてからすぐに適用する
ので、適用は常に《眼球の輪/Ocular Halo》が先になる。
結局、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という能力を得る。
4)カードを良く読もう
上記の例では、《クラージ実験体/Experiment Kraj》は、「{Tap}:カードを1枚引く」という
能力を得ることがわかった。では、《眼球の輪/Ocular Halo》のもう一方の能力、
「(白):エンチャントされているクリーチャーは、ターン終了時まで警戒を得る。」
はどうだろうか?
賢明な人ならばおわかりの通り、《クラージ実験体/Experiment Kraj》がこの能力を得ることはない。
なぜなら、この能力は《眼球の輪/Ocular Halo》が持つ能力であり、エンチャントされたクリーチャー
(この場合は《灰色熊/Grizzly Bears》)が持つ起動型能力では無いからだ。
カード・テキストは良く読まないと、落とし穴に落ちる。(私も、もう何回も落ちたことだか。)
ややこしい事態になったら、まず深呼吸。
そして、カードを落ち着いて読むこと。
これを心がけるだけで、ずいぶんとつまらないミスを無くすことができる。
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そんなところで。
コメント
いいえ。サイクリングすることはできません。
そもそも《クラージ実験体/Experiment Kraj》の能力は、パーマネントになっている時にのみ適用されます。
手札にあるときには適用されませんので、サイクリングを持つこともありません。